
ユーザの自宅にビールを配送するオンラインプラットフォームとして起業したタイの Wishbeer は、国内に複数の旗艦店を開設することでオフラインのプレゼンスを強化する取り組みを行っている。
このスタートアップは、2015年にバンコクでポップアップ店舗を開設したのを皮切りとして、旗艦店「Wishbeer Home Bar」をオープンさせた。この店は、ビール、ワイン、スピリッツを保管する倉庫としての役割もある。
同社設立者兼 CEO の Le Louer 氏はこの取り組みを、顧客と触れ合えるマーケティングおよびブランド戦略の一環だと説明してくれた。
当社ビジネスにおけるオムニチャネルのアプローチです。
同氏は e27との電話インタビューでそう語った。

Images Credit: Wishbeer
500 Tuk Tuks および500 Startups からシード資金を調達した同社は、その後成長に向けた事業展開とシリーズ A ラウンドを目指している。
Le Louer 氏は次のように述べている。
2017年、タイと東南アジアでの事業展開に向けシリーズ A を目指し始めました。その間、オンラインとオフラインの両方で事業を拡大していきたいと考えていますが、多額の投資をすることなく成長できる最も簡単な方法は、店舗の増設です。
e コマースの利益率は低く、しかも多くの広告を要求されることがわかっていました。同時に、私たちには多くのフォロワーやファンがいることも承知しています。国内でビールを好きな人はほとんど Wishbeer のことを知っています。なのでオフライン事業を拡大し、素早く店舗を開設したいと思えば、唯一のソリューションはクラウドファンディングでした。
しかし難点が一つある。中央銀行のタイ銀行が、クラウドファンディングプラットフォームのライセンスに関する規制をまだ確定していないのだ。
そこで Wishbeer は一つの解決策として、Facebook 広告に投稿して店舗開設に投資してくれる顧客を募ることにした。
「お客様自身の Wishbeer Home Bar を開きましょう」や「今度オープンするバーのオーナーになりましょう」といったキャッチコピーを使って、その広告では、連絡先情報のシンプルな入力フォームをユーザ向けに提供した。
同社チームはその後、顧客一人ひとりに連絡を取り、オフラインで対話をした。協力してくれそうな投資家には、条件規定書や契約書への署名など必要な手続きをしてもらった。
1,000人の潜在的な投資家のうち、同社は25人との取引を完了し、目標額2,000万タイバーツ(60万米ドル)の半分にあたる1,000万タイバーツ(30万米ドル)を調達した。
この資金調達により、4か月以内に3つの新店舗を開設することができた。そして開設はその後も続く予定だ。
オーナーの感覚
同社が今回のような方法を採用した背景には、最も得意であるものを活用するという考え方がある。
ICO など別の資金調達方法もあったものの、同社チームの強みはデジタル広告にあると Le Louer 氏は考えていた。

Images Credit: Wishbeer
この資金調達法には、企業、ロイヤルティの高い顧客、ゆくゆくは投資家となる人たちの間で強いコミュニティ意識を育めるという別の利点もある。
Le Louer 氏は次のように述べる。
主たる目的は資金調達ですが、このキャンペーンは、顧客が当社のことを気に入ってくれていて、ブランドを信用してくれていることを知ることができる PR 活動でもあるのです。クラウドからは好意的なフィードバックが寄せられました。
顧客やファンの方には、当社事業の成長に関わってほしいという思いもありましたので、ネットワーク効果という利点も得られます。たとえ一部分であっても100人がビジネスのオーナーになれば、その人たちがそれぞれ10人呼び寄せてくれます。すると1,000人の人がビジネスに関わるようになるのです。ある種のバタフライ効果が生まれます。
同社は残り30万米ドルの調達を目指しており、資金調達手続きは今でも行われている。
さらに、ベンチャーキャピタルからの調達という従来の方法によるシリーズ A ラウンドに向けた取り組みも行っている。
Facebook 広告での資金調達はオフラインのプレゼンス強化が目的だったが、シリーズ A ラウンドの調達資金は国外での事業展開に重点が置かれる予定。
今後、インドネシアやフィリピン、ベトナムといった東南アジア市場への進出に期待を寄せている。
タイ以外の国でもオンラインとオフラインのビジネスモデルを再現して展開したいと思います。
Le Louer 氏はそう結んだ。
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