上海発のRedditとFacebookを足して割ったようなアプリ「Jike(即刻)」——Tencent(騰訊)の支援を受け、中国で大きく成長中

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Image credit: Jike(即刻)

中国語で「すぐに」を意味する Jike(即刻)は、中国のソーシャルメディア分野における顕著なギャップ、つまりコミュニティの欠如から利を得たいと考えている野心的なスタートアップだ。

上海で2015年に立ち上げられたこのアプリは間もなくソーシャルメディアユーザの間で火が付いた。最初の2年間で同社はシリーズ A と B の2つのラウンドで資金を調達し、2018年2月にはシリーズ C ラウンドで Tencent(騰訊)からの3,000万米ドルの調達を完了させた。昨年7月には数千万米ドル相当のラウンドがそれに続いた。

欧米のインターネットプラットフォームに親しんでいるユーザへ向けて言えば、Jike は Reddit とFacebook のハイブリッドのようなものである。Reddit のようにユーザをコミュニティへとグループ分けし、Facebook のように人々をつなぎ合わせてオンライン上の本物のつながりを築き上げる。

Jike は興味を基にしたトピックやテーマのソーシャルサークルにユーザをグループ分けする。サインアッププロセスでは、ユーモアやテクノロジー、ライフスタイル、音楽、映画、写真などの14種のソーシャルサークルの中から少なくとも2つに入るように言われる。

これらのソーシャルグループの大きさは5万人以下のものから100万人を超えるものまで幅がある。もっとも大きなソーシャルサークルのテーマは「男女」であり、100万人以上のユーザを擁する。

コミュニティに注力することで Jike は主としてピアツーピアのコミュニケーションプラットフォームである WeChat のような他の人気アプリとは一線を画している。また Weibo ではユーザは様々なメディアの記事のシェアや人気のハッシュタグのチェック、出版社やブランド、有名人、ニュースなどのフォローができるが、Jike は相互的なつながり合いの構築をあまり強調していない。

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とはいえ、Jike はコミュニティを築くという考えに常に基づいていたわけではない。昨年になるまでこのアプリはシンプルなサブスクリプションとプッシュ通知モデルのコンテンツ配信プラットフォームという位置づけだった。ユーザは選んだテーマをフォローし、インターネットで情報を集めると Jike がそれに関連したコンテンツを送り届けるというものだった。

Jike のソーシャルへの転換で注目すべき最初のものは2016年、アプリ内のコメント機能のリリースと共に始まった。同年末までにはユーザが自身のソーシャルサークルを作ることができるようになったが、それまではこういったものは主にアプリの編集チームによって運営されていたものだった。

作成の手綱をユーザに渡すことで、Jike は人々が集まり新しい話題やユニークな話題、クリエイティブな話題、興味深い話題、楽しい話題などについて話し合う場所となり、その他多数のコンテンツ配信プラットフォームとは一線を画すこととなった。

昨年、Jike は再び新しいことを始めようとした。主に専門的なコンテンツを取り上げ、Jikeはユーザが作成したコンテンツを優先するように変わったのである。

Jike のフィード全般にわたって、報道機関による記事や動画は一般ユーザが作成した文章や画像、ショートビデオに取って代わられるようになり始めた。Jike の本体はコミュニティによるコミュニティのためのプラットフォームになっている。

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Photo credit: Tech in Asia / Steven Millward

コミュニティ志向の戦略は早い段階で決定していた。共同設立者兼 COO の Lin Hang(林航)氏は、この変容はアプリの初期のイテレーションでサブスクリプション機能をローンチした頃にまで遡ることができると Tech in Asia に語る。

データを見てみると、ユーザは単独でコンテンツを消費するよりも、インタラクティブさや共に盛り上がること、仲間意識を求めていることは証明されていました。

同氏はまた「プラットフォームの成功は環境に順応できる能力にかかっている」とも指摘する。飽和した市場では特に正しい見識である。何しろ、ソーシャル界隈へと動き始めているコンテンツプラットフォームは Jike だけではない。たとえば、中国の大手企業である Zhihu(知乎)Toutiao(今日頭条)も、ユーザをコンテンツや仲間のユーザと結びつけるソーシャル機能をロールアウトしている。

それでも Jike ほどコミュニティ構築に力を入れているところはないと Lin 氏は主張する。コミュニティを作り上げていくことには、単にコンテンツを配信するよりもはるかに大きなマーケットポテンシャルがあると同氏は信じている。

Jike がやろうとしていることは高尚な質を伴っている。それは、孤独をなくすことで社会に良い影響を与えようというものだ。世界の他の国々と同様に、中国でも若者がもっとも孤独を感じがちであり、デートアプリの Momo(陌陌)と Airbnb のライバルである Xiaozhu(小猪)が行った調査では、22歳から30歳までの60.8%が寂しいと答えている。

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「The Rap of China(中国有嘻哈)」などの番組のスポンサーとして Tik Tok の人気を後押ししている。

Jike の次のステップは、より多くの中国人ネチズンを引き入れることだ。2018年12月にはこのアプリのデイリーユーザはちょうど200万人に達し、ユーザがアプリで過ごす時間の平均は1時間以上だった。2018年第3四半期における Weibo(微博)の2億人近いデイリーユーザや WeChat(微信)の10億人以上のマンスリーユーザに比べれば、その数は少ない。

最近のマーケティングへの取り組みは、同社のニッチからマスへという意図を反映している。同社は iQiyi(愛奇芸)、Tencent Video(騰訊視頻)、Bili Bili(嗶哩嗶哩)を含む主な動画配信プラットフォームで放映している3つのローカルテレビ番組のスポンサーとなっている。番組の内容はそれぞれ違うが、すべて若い視聴者をターゲットとしている。

その中の1つは昨年12月に Tencent Video で初めて放送された「Rave Now(即刻電音)」というオーディション番組である。Jike が冠スポンサーとなっているこの番組では、1990年から1995年までに生まれた中国人の間でブームとなっているジャンルであるエレクトロニックダンスミュージックを紹介している。

こういった「エンターテインメントマーケティング」は、音楽のオーディション番組形式の中であればなおさら、中国人若年層にリーチするのに効果的となっている。特に Jike は海外市場では TikTok という名前で知られている Douyin(抖音)の例に倣おうとしている。Douyin が2017年にヒット番組「The Rap of China(中国有嘻哈)」およびメインストリームのバラエティ番組「Happy Camp(快楽大本営)」と「Day Day Up(天天向上)」のスポンサーとなると、たった6か月でユーザベースが10倍に膨れ上がったと報告されている。

中国テック大手への挑発

2018年11月、Jike はネット上と屋外の両方で挑発的なマーケティングキャンペーンを始め、直接的および婉曲的に中国最大手のインターネット企業に声を挙げた。

目立った例としては、独身の日のショッピングイベントは一緒になって騒ぐだけのものでしかないと述べた Alibaba(阿里巴巴)や JD.com(京東)のようなネットショッピング企業への遠回しな当てこすりがある。また、検索結果は値段で決まる広告のランキングに過ぎないと主張し、あまり遠回しではない言い方で Baidu をおちょくった。

また一方では、人々が共通の関心でつながり合うことができないとして(名指しはされていないが)WeChat Moments(微信朋友圈)が批判され、Weibo は「トラフィックの99%はくじ引きと試供品、結婚報告とスキャンダル」であると面白おかしく非難された。

そしてもちろん、それらのテック大手に欠けていると言われているユーザとのつながり合いや情報開示については、実りのあるコンテンツとコミュニティを約束する Jike にそのソリューションを見ることができるとした。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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