インドネシアのEコマース・ユニコーンBukalapakの今後——オフラインビジネス、金融サービスにも積極的に進出

by Tech in Asia Tech in Asia on 2019.3.15

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Bukalapak は、2018年1月の非公開投資ラウンドで資金を得た際、インドネシアのユニコーン企業の仲間入りを果たした

e コマースマーケットプレイスである同社はインドネシアで4番目に企業価値が10億米ドル以上のスタートアップユニコーンとなった。他には Go-Jek、Traveloka、そしてライバルの Tokopedia がいる。

これは重要な業績であり、嬉しい変化だ。Bukalapak は自国では抜きんでているが、国際的な観点からすると、その活動はこれまで Tokopedia、また Shopee や Lazada といった国内企業の陰に隠されてきた。ところが今やメディア、従業員候補者、インドネシア政府などのステークホルダーからますます多くの注目を集めるようになっていると、Bukalapak の共同設立者で社長の Fajrin Rasyid 氏は語る。

とはいえ Rasyid 氏によれば、別にユニコーン企業のステータスを到達目標としてきたわけではなかったという。

同氏は次のように語る。

弊社にとって、ユニコーン企業になることは、車での長旅の途中でガソリンスタンドに立ち寄るようなものです。ビジネスを構築するとは、投資金を獲得することではなく、お客様にサービスを提供することです。資金調達はその助けとなる1つの方法にすぎません。

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ジャカルタにある Bukalapak 本社
Photo credit: Bukalapak

Bukalapak は顧客へのサービス提供のために、フィンテックサービス(e ウォレットの BukaDana、ミューチュアルファンド金融商品の BukaReksa など)、人工知能(ユーザエクスペリエンスの向上のため)、政府サービスといった戦略を用いる考えだ。また、インドネシアのバンドン市に研究開発センターを設置した。

しかし、同社にはより大きな野心がある。オフラインでの事業に乗り出すことだ。インドネシアの e コマース業界は一見巨大に思えるかもしれないが、McKinsey & Company によると、2017年の小売業販売総額のたった3%にしか当たらない。小売業を行うことで、Bukalapak は顧客層を大幅に拡大できるというわけだ。

もしも e コマースだけに集中してしまうと、ポテンシャルはそれほど大きくなりません。一般の小売りに関して私たちも何かできるでしょうか?

Mitra Bukalapak でオフライン進出

Bukalapak のオフライン戦略とは、Mitra Bukalapak だ。これは、Bukalapak が2017年後半に初めて導入したプログラムで、同社はこのプログラムに7,050万米ドルを投資している。

Mitra Bukalapak は「Bukalapak パートナー」という意味だが、このプログラムを通してインドネシア中の小さなオフライン企業らと連携している。この連携には2つの目的がある。1つには、同プログラムによって、ワルン、すなわち道端のキオスクは、Bukalapak に対応したデジタル商品(携帯のクレジット、電車乗車券、電気トークンなど)をオフラインの顧客に販売することができる。

第2に、Mitra Bukalapak アプリにより、こうしたオフライン企業がインスタントヌードルやたばこ、商品回転率の高い消費財などの商品目録を購入できるようになる。こうした商品は Bukalapak プラットフォーム上で販売業者により直接出荷・発送される。

オフラインの顧客、特にオンラインショッピングに慣れていない顧客は、自分の代わりに Bukalapak プラットフォーム上でオンライン購入してくれるよう、Bukalapak 提携店に依頼することもできる。

Rasyid 氏によれば、Mitra Bukalapak には始まって以来50万以上の小企業が参加しているという。e コマースビジネスの Bukalapak と比較して総流通総額はまだ遅れているが、Bukalapak よりも急速に成長している。

もちろん、Mitra Bukalapak の提携店で買い物をする消費者たちは、弊社のオンラインプラットフォームで買い物をする人よりも1回あたりの購入金額が小さいですが。

Rasyid 氏によれば、ポテンシャルは莫大で、インドネシアに存在するワルン数の正確なデータは見つけるのが困難なほどだ。Bukalapak が注力しているのは、Mitra ビジネスの全体的な成長数、提携店の収入額の増大である。

オフラインに進出することによってインドネシアの中小企業経済をより広い視野でとらえることができるようになります。

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Bukalapak 共同設立者兼 CEO の Achmad Zaky 氏(左)と Bukalapak パートナー
Photo credit: Bukalapak

Bukalapak は、オフライン分野に狙いを定める唯一の企業ではない。一例として、Tokopedia は昨年11億米ドルの巨額資金を集め、オンライン、オフライン両方のコマースを強化している。また、Bukalapak のものと内容も名前も似た製品、Mitra Tokopedia を2018年後半にリリースした。

また、Tokopedia の投資家 East Ventures の援助を受けているスタートアップ Warung Pintar があり、この企業は、小売業者の管理する、オンライン取引に対応したプレハブ式ワルンを開発している。このモデルはインドネシアに限られておらず、Growsari というスタートアップもフィリピンで同様の課題に取り組んでいる。

Bukalapak は競争を恐れることはないと、Rasyid 氏は語る。

このセクターにおける好機は今なお非常に大きいと思います。(中略)この種のビジネスにどのような人が投資しても、最終的な影響は良いものであるはずです。Bukalapak にはもちろん先行者としての独自の利益があってほしいと思います。しかし、それは弊社にとっては、お客様が弊社を愛顧してくれるように、クリエイティブであり続け、イノベーションを行い続け、より多くの製品とサービスを提供し続ける必要があるという意味でもあります。

オフラインに進出することで、Bukalapak は製品やサービス同士のオンライン・ツー・オフラインの統合という可能性へと開かれた。そして、多くの取り組みを通して新たな領域に足を踏み入れることになった。

1つの販売促進策としては、Bukalapak プラットフォームを通してインスタントヌードルがオンラインで1ルピアで買うことができ、支払いは Bukalapak 提携店を通して行うことができるというものだ。別の例としては、主に Bukalapak のオフラインの提携店で買い物をする顧客に対し、アプリ内で使えるクーポンを提供することだ。

品物が売られるのがオンラインであれオフラインであれ関係ないという状態にしたいのです。

「スーパーアプリになろうとしているわけではありません。」

Bukalapak はオフライン進出を成長させるとともに、オンラインでのサービスの差別化を続けている。特にフィンテック分野においてだ。これは、多くの e コマース企業にとって自然な流れだ。

フィンテックへの Bukalapak の進出は、e ウォレット BukaDompet とともに始まった。(ただしこのサービスは、その後インドネシア中央銀行からの許可を待っており凍結している。)その次に BukaDana を導入した。これは、フィンテックスタートアップの Dana との提携の結果だ。(Bukalapak も Dana も、インドネシアのメディア複合企業 Emtek Group が投資している。)

また、フィンテック企業 Akulaku と提携して分割払いサービスを提供しているほか、次の2つの投資商品も提供している。ユーザが微小量から金(インドネシアでは今なお人気がある)を買うことができる BukaEmas、そして BukaReksa だ。

店舗側はまた、BukaModal プログラムにより、ビジネス拡大のために Bukalapak からローンを借りることができる。Bukalapak はこのプログラムのために、インドネシア最大の国有銀行 Bank Mandiri やオンライン貸付スタートアップの Investree、Modalku、Koinworks と提携している。

近い将来には保険商品のローンチも検討中だ。

Rasyid 氏によれば、Bukalapak の投資商品は、Mitra Bukalapak と似た成果を上げたという。取引数は増えたが、多くのユーザは投資経験がないため、投資額は比較的小さいままだ。平均して7米ドルから35米ドルだという。

それは問題ありません。投資製品に関する周知の問題です。さらに進めていけば、より多くの人がより多額を投資してくれるようになるはずです。

Raysid 氏によれば、Bukalapak の新製品開発アプローチは、有機的で売り手のニーズにインスピレーションを得たものであることが多いという。その1つの例が、デジタル投資プラットフォーム Bareksa と提携してローンチした BukaReksa だ。このプラットフォームにより、店舗側は販売代金の一部を Bukalapak の e ウォレットに投資することが可能となる。

私たちはスーパーアプリになろうとしているわけではありません。小売りビジネスのこうしたバリューチェーンの役に立とうとしているのです。

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並んだ BukaBikes
Photo credit: Bukalapak

Bukalapak が少し違うやり方をとったのは、研究開発センターをジャカルタから南に3時間のバンドン市に設置したことである。このセンターのために、同社はバンドン工科大学(ITB)と提携した。バンドン工科大学はインドネシアでトップクラスの大学で、共同設立者で CEO の Achmad Zaky 氏の母校だ。

研究開発センターでは従業員たちがアイデアを売り込むことができる。実際に実行に移されたアイデアとしては、バンドン工科大学で現在稼働中のバイクシェアリングプログラム BukaBike がある。しかし究極的には、同センターは Bukalapak プラットフォームに付加価値を与えられるアイデアに焦点を当てている。これには、政府・公共サービスに関連した製品が含まれることになるであろう。例えば最近、ユーザが自動車税を払うことのできる機能がローンチされた。

Rasyid 氏によれば、大学と提携することにより、奨学金プログラムやインターンシップについて協同することができるという。そして、地域の大学卒業者のスキルと、業界が実際に求めていることとのギャップを小さくすることができるというのだ。

他のユニコーン企業はインドなど外国に研究開発センターを開設しています。

Rasyid 氏は Go-Jek や Tokopedia を念頭に述べる。

弊社に関して言えば、もしもインドネシア国内でできるのだったら、やればいいではないかという考えでした。

ジャカルタはインドネシアのテックシーンの中心であり続けており、主要なテクノロジー企業や VC 企業の大半が同地に本社を置いている。しかし、同地の悪名高い交通渋滞や大気汚染が原因で、生活の質はインドネシアの別の地域に比べて低い。加えて、多くのテクノロジー人材は、ジャカルタ外の諸大学、例えばバンドン工科大学やジョグジャカルタのガジャ・マダ大学などの出身だ。

ジャカルタで暮らしたくも働きたくもないという、地方の人材がたくさんいます。こうした人材は、どうしたら故郷を離れることなく能力を発揮して働くことができるでしょうか?

バンドン市の他にも、ジョグジャカルタやメダン、スラバヤにも別の研究開発センターを開発する計画で、近い将来ローンチする予定だという。

小規模投資を得ることの利点

現時点で Bukalapak はプラットフォーム上に400万の店舗を有しており、月間アクティブユーザは約5,000万人だ。ユニコーン企業の仲間入りを果たした非公開の資金調達ラウンドに続いて、1月にまた別の投資があった。これは、韓国の金融サービスグループ Mirae Asset と、日本のソーシャルメッセージングアプリ LINE の親会社である Naver が共同で立ち上げたファンドによる5,000万米ドルのラウンドだった。

最新の総流通総額については明らかにされなかったが、今年これまでの声明によれば、同社の月間総流通総額は2億8,300万米ドルになる。比較すると、Shopee は東南アジアにおける e コマースプラットフォームのトップだとしており、同社の2018年推計に基づくと、東南アジア6市場の月間総流通総額は5億7,500万米ドルから6億800万米ドルの間だ。

しかし、Shopee や Lazada と違って Bukalapak は当面インドネシアに焦点を絞る計画だ。

インドネシアでのチャンスの方がはるかに大きいのです。もしもパートナー企業が見つかれば、国外でも事業を行うことも検討できます。(中略)しかし、近い将来にではないでしょう。5年から10年先かもしれませんし、誰にも分かりません。

これにより Bukalapak は Tokopedia と正面から競争することになる。Tokopedia は総流通総額を公開していないが、一般のほとんどの見積もりによれば現在業界をリードしているのは Tokopedia だ。AppAnnie によると、Tokopedia は月間ユーザ数からしてインドネシアの e コマースアプリのトップだという。

そして当然2社の最新の投資ラウンドという問題がある。Bukalapak の5,000万米ドルの資金調達は Tokopedia のもののわずか4.5%の規模だ。

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Bukalapak 共同設立者兼社長の Fajrin Rasyid 氏(右)とバンドン市長
Photo credit: Bukalapak

その反面、Bukalapak はそれだけの資金でよくやってきたと言える。インドネシアで第2位の国産 e コマース企業であり、その上ユニコーン企業でもあるということは、やはり他の多くの企業の先を行っているということだ。

同時に、おそらく「根性のある」と形容することのできる企業文化、そして潤沢な資金を備えた競合らよりも ROI(投資利益率)に重点を置いた企業文化を育ててきたと、Rasyid 氏は付け加えた。

例えば Shopee は配送料補助で広く知られるが、最近その規模を縮小した。とは言え活動資金があるということは、実際は配送料補助を行うだけの余裕があるということだ。Bukalapak はその一方で、そうした補助を時々しか行ってこなかったし、行うとしても通常運送業者と提携してのことだ。

CEO の Zaky 氏は、2017年の Tech in Asia のジャカルタカンファレンスの炉辺談話でこう語っている

助成金というのは上手くいきません。企業を倒産させることになります。

Rasyid 氏は、Bukalapak が将来より多くの配送料補助を導入する可能性はあると認めるが、他のマーケット戦略に比べて ROI が低いため、現時点での注力事項ではない。

単にたくさん資金があるからといって、マーケティングに多額を費やしたくはないのです。そんなことをすれば、資金がなくなった瞬間に問題が起こることになります。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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