京都発のアグリテックスタートアップ・坂ノ途中、シリーズBで6億円を調達——有機農産物マーケットプレース、アジアの森林コーヒー事業を強化

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Image credit: On The Slope

京都を拠点に、新規就農者の農業参入支援、対面や直販での野菜販売などを展開するスタートアップ・坂ノ途中は17日、シリーズ B ラウンドで6億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加した投資家は次の通り。

  • 京都大学イノベーションキャピタル
  • Impact and Innovation, LLC(アールテック・ウエノおよびスキャンポ・ファーマシューティカルズ社の共同創業者である久能祐子氏による会社)
  • 価値共創ベンチャーファンド(NEC キャピタルソリューション、ベンチャーラボインベストメントが運営)
  • 京信イノベーション C ファンド(フューチャーベンチャーキャピタルが運営)
  • 京都市スタートアップ支援ファンド(フューチャーベンチャーキャピタルが運営)
  • セラク(東証:6199)
  • たぐち事務所(エス・エム・エスの共同創業者である田口茂樹氏による会社)
  • 中信ベンチャーキャピタル
  • ナント CVC(南都銀行、ベンチャーラボインベストメントが運営)
  • 農林漁業成長産業化支援機構
  • ハックベンチャーズ
  • みずほキャピタル
  • 三菱 UFJ キャピタル

これは坂ノ途中にとって、2014年に実施した関係者からの資金調達、2016年12月に実施したシリーズ A ラウンド調達(2億円)に続くものだ。フューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、京都中央信用金庫傘下の中信ベンチャーキャピタルは、前回のシリーズ A ラウンドに続くフォローオンでの参加となる。

坂ノ途中では現在、新規就農者の農業参入支援と対面や直販での野菜販売、有機農産物の生産者とバイヤーのマッチングプラットフォーム「farmO(ファーモ)」、東南アジア各国の森林内におけるスペシャルティコーヒーの栽培・流通の3つを軸に事業を展開。特に farmO とコーヒー栽培については、以前からの農業参入支援・野菜販売による売上を下支えする新規事業として注目される。

坂ノ途中の仕組みで農業を営む新規就農者
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農業参入支援・野菜販売事業の内容については、シリーズ A ラウンドの際の記事に書いたので詳細は省略するが、年に売上が1.5〜1.6倍のペースで成長しているところを、今回ラウンドの投資家でもあるセラクの業務ソリューションを導入することで2倍以上の成長を目指すという。セラクは、農業に IoT 技術を融合した圃場環境モニタリングサービス「みどりクラウド」を提供している。また来年には、同社の農業参入支援・野菜販売事業の認知度向上を狙って、京都市内中心部に飲食店を、東京都内にグローサリー・ストアをオープンする計画。具体的な場所は定まっていないが、京都の飲食店については、四条烏丸や四条河原町のような繁華街への出店が想定される。

farmO のダッシュボード
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有機農産物の生産者とバイヤーのマッチングプラットフォーム farmO は、一般社団法人「次代の農と食をつくる会」と連携して運営している。2019年5月現在、424件の生産者と224件のバイヤーが登録しており、有機農業者データベースしては国内最大規模だという。現在のところはマッチング機能しかないが、坂ノ途中では今後、受発注・請求・決済機能を追加開発する予定。農産物の売買においては、顧客が注文した後の数量変更、顧客に農作物が届いた際の状態による価格変更など、通常の受発注システムではカバーできない仕様が備わる予定で、この種の機能を備えたシステムとしては新しい存在になるようだ。坂ノ途中ではプラットフォームを無料で提供し、受発注時の決済手数料でマネタイズする考え。

ラオスのコーヒー農家
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コーヒー栽培は、「アグロフォレストリー」という森林の中で栽培法を東南アジア各国で展開。スペシャルティコーヒーを生産できる上に、現地の農家の人々に持続的な収入源を提供できるため、森林伐採を防ぐ効果もあるという。同社ではラオス、ミャンマー、フィリピンで栽培事業展開しており、今年はタイ、イエメン、バリ、ネパール、中国に産地を拡大する計画。コーヒーの熟度の統一や発酵レベルの安定化など品質向上、栽培・収穫・発酵後の、日本の珈琲店・焙煎工場までの流通経路・販路拡大なども図る。

坂ノ途中の設立は2009年7月、創業者の小野邦彦氏が京都大学在学中に「環境×農業」分野での起業に興味を持ち、2006年のキャンパスベンチャーグランプリ大阪大会での特別賞受賞を経て事業を開始。小野氏が金融畑を経験していることもあり(坂ノ途中を立ち上げる前に、BNP Paribas で金融商品を開発していた)、今回の資金調達は自ら先頭に立って投資家らと交渉にあたってきた。今後は、事業のさらなる拡大に向けて、CFO やエンジニアの採用にも注力したいとしている。

坂ノ途中 Soil 京都・九条大宮店
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