JR東日本、スタートアップとの協業プログラムの第3期デモデイを開催——一部採択チームのサービスは、12月4日からJR大宮駅西口で実演へ

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JR 東日本スタートアップは28日、インキュベーション/アクセラレーション・プログラム「JR EAST STARTUP PROGRAM」の第3期デモデイを開催した。これは JR 東日本とスタートアップのオープンイノベーションを促進するためのプログラムだ。前回までは「アクセラレーションコース」と「インキュベーションコース」に分かれていたが、今回から一本化され「エリア拡大」「地域連携」「グローバル」という3つの提案テーマが設定された(提案テーマを定めないチームもあり)。

応募のあったスタートアップ262社のうち21社が採択され、約半年間におよぶプログラムに参加、この日のデモデイを迎えた。今後、JR 東日本の駅構内やグループ関連会社のサービス拠点や店頭などを使って実際のサービスが試験提供(PoC)される。一部のサービスは、12月4日〜9日に大宮駅西口イベントスペースで開催される実証披露イベント「STARTUP_STATION」でデモ公開される予定。本稿ではデモデイでのピッチの結果、審査により入賞した5社を紹介する。

デモデイで審査員を務めたのは、以下の5人の皆さん。提案内容の「新規性」「ビジネス性」「JR 東日本のリソースをいかに活用しているか」の3つの指標によって評価された。

  • グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 仮屋薗聡一氏
  • プロノバ 代表取締役社長 岡島悦子氏
  • 守屋実事務所 代表 守屋実氏
  • JR 東日本 常務取締役 事業創造本部長 新井健一郎氏
  • JR 東日本 常務取締役 総合企画本部長 喜㔟陽一氏

【スタートアップ大賞】CBcloud

副賞:100万円

CBCloud は、荷主とフリーランスの運送ドライバーをマッチングするプラットフォーム「PickGo」を提供。2016年の KDDI ∞ Labo 第10期から輩出され、今年8月に実施したシリーズ B ラウンドまでにデットを含め累計約18億9,000万円を調達している。サービス開始から約3年を経て、PickGo 上にはこれまでに全国で15,000名のフリーランスドライバーが登録している。荷主は荷物を運んでくれるドライバーを探し始めてから平均56秒で見つけられ、99.2%のマッチングが成功しているという、

インバウンド観光客が増える中で、駅などで問題となっているのは観光客が持つ手荷物の取扱だ。急激な需要増に供給が追いつかないため、コインロッカーは常に空きがなく、東京駅の手荷物預かり所では10時の営業開始から1時間後には満床になってしまう。東京駅の案内所への問い合わせ内容の53%は、ロッカーや手荷物に関するものだった。これ以上、駅の中に手荷物を預かる場所を増設するのは難しく、この問題の解決には新しいアプローチが必要となる。

CBCloud では、PickGo の仕組みを使って、東京駅の手荷物預かり所から観光客の宿泊先ホテルに配送するサービスを考案。観光客は街や観光地に駅から手ぶらで出かけられる上、駅に手荷物をピックアップしに戻る必要もない。一部地域で問題になっている公共交通の混雑も緩和できるだろう。JR 東日本物流との協業で11月11日から東京駅で始めた実証試験では、既に100個以上の手荷物を配送。将来は東京駅以外のメガターミナルでのサービス展開、閑散時の新幹線や在来線を使った配送なども視野に入れる。

【優秀賞】Green’s Green

副賞:50万円

Green’s Green は、土を使わずに苔を人工栽培できる独自技術を保有している。苔に湿度を一定に保つ機能、二酸化炭素を固定する機能、空気を清浄化する機能などが備わっており、温暖化対策で緑化を義務付けられている国々や SDGs を目標に掲げる国々で需要が高まっている。そこで、Green’s Green ではスナゴケを栽培したシート上の商品を開発した。灌水が不要、雑草防除に効果があり人力除草が不要、半永久的に利用できるため付加価値が高いものとなる。土を使わないので検疫が簡素化でき、輸出も容易だ。

同社では、鉄道高架下の遊休地を活用した苔の人工栽培を提案。駅から遠い遊休地は、商業地としては高い家賃を取れるものにはならないが、日射量が必ずしも多くないことが苔の栽培にはむしろ好都合となる。高架下2キロメートルで苔の人工栽培を展開した場合、3万平方メートルが栽培地として利用可能で、年間1億円を超える売上が確保できる試算。苔の世話には特別な技能や知識は求められないため、JR 東日本グリーンパートナーズと提携し障害を持った人の労働力を活用できる可能性を狙う。

【優秀賞】日本環境設計(グローバル)

副賞:50万円

日本環境設計は、繊維やリサイクルから化学的処理によりリサイクル技術を開発した企業だ。都市鉱山から得られた貴金属を使った東京オリンピックのメダル製作、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で描かれていた「ごみで車が走る」リサイクル燃料車「デロリアン」の実現、衣料品をリサイクルしてできたバイオ燃料でジェット機を飛ばす企画などで知られる。

自社技術を活用した駅から始まる SDGs を提案。駅で回収した衣料品をエコバッグや T シャツに生まれ変わらせ販売する計画だ。不要な衣料1着からは新しい衣料1着、不要なオモチャ1個からは新しいオモチャ1個が作れるなど、リサイクルを重ねることによる材料の劣化が生じない技術が最大の特徴。新駅「高輪ゲートウェイ駅」に不用品回収・リサイクル品販売の拠点を設置したいとしている。

【オーディエンス賞】ヘラルボニー(グローバル)

副賞:10万円

知的障害者は日本国内に108万人、世界に2億人いると言われる。ヘラルボニーは彼らが持つ能力を生かし、特にアートというアプローチで事業化を支援している。日本各地の福祉施設と連携することで、知的障害者が描いたアート作品をライセンス販売する事業を展開しており、これまでに集めたアート作品の2,000点以上。

ヘラルボニーでは2つの事業を提案。一つは、駅を社会貢献機能を備えたミュージアムと位置づけ、吉祥寺駅周辺のアーティスト50人と組んで、同駅を12月からアートでラッピングする事業を展開。もう一つは、渋谷区と連携、渋谷駅周辺の工事現場の仮囲いに掲出しているアート印刷ターポリンをトートバッグにして加工・販売することで、JR 東日本、福祉施設、ヘラルボニーの三者が利益を得られる。

【審査員特別賞】バイオーム(エリア拡大)

副賞:10万円

生物情報の可視化をビジョンに掲げるバイオームは、スマートフォンのカメラで撮影するだけで国内7万種の生物の名前を判定できるアプリ「Biome(バイオーム)」を展開している。同社では同アプリを使って、生物の多様性を自然の中で体現できるイベント「いきものクエスト」を全国各地で開催しているが、JR 東日本スタートアップ、JR 西日本イノベーションズ、JR 九州と協業し、各社の鉄道を使って巡りながら、地域毎の生物特性を記録・シェアできる「バイオームランド」を来年3月から展開する。

アプリを利用し沿線を回遊することにより、鉄道各社にとっても乗客の利用促進の効果があるほか、自然が豊富な地域で展開することで過疎地域への送客の効果も得られる。バイオームではユーザからのデータを集積し、駅圏内や鉄道沿線毎の生物多様性をマップ化・ランキング化することで、このプロジェクトのゲーム性を高めることで、ユーザ参加のモチベーションを高める計画。合計100万人の参加、参加者の総移動距離地球10周分、300万個体の発見を目指す。これまでにシードラウンドで1億円を資金調達済。

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