ロシアの配車サービス大手Yandex.Taxi、その居眠り運転や危険なドライバを排除する方法とは?

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居眠り運転を阻止すべく、Yandex はドライバの注意を引くコントロールカメラを試験している。
Image credit: Yandex

Yandex は20年間のビジネスでロシア版の Google や Amazon、Spotify と呼ばれてきた。それは主に、モスクワを拠点とするこのテック大手がオンライン検索、音楽配信、e メール、地図、ナビ、動画などあらゆる隅々の分野までリーチを拡大してきたためである。2011年、Yandex はモバイルのタクシー配車サービスをローンチし、必然的に「ロシア版 Uber」とされることになった。そして2017年、Yandex.Taxi と Uber はこの地域における事業を合併し、東欧をターゲットとする新たなジョイントベンチャーをローンチした。

現在 Yandex.Taxi はヨーロッパ、中東、アフリカのいくつかの市場に加えて、独立国家共同体(CIS)全域で営業している。同社は Uber の軌跡に似た道を辿って今ではフードデリバリーを提供しており、2018年にはヨーロッパで最初の自動運転タクシーサービスを限定的なパイロット版の一部としてローンチした。

しかし、疲労からドライバーの身元証明まであらゆることに関する懸念を伴って、安全性が配車サービス業界の議論の焦点として浮上している。11月には、Uber は控訴中であるがロンドンにおける認可を失っており、かねてから規制当局のロンドン交通局(TfL)は「不適格パターン」や「乗客とその安全性を危険にさらしている」違反を報告していた。

TfL が特定した問題の1つは、身元確認がされていないドライバーでも、容易に適格ドライバーの Uber アカウントで乗客を乗せることができるという点である。これに対し Uber は、すでにアメリカ市場で行われているものと同様に、イギリスのドライバーが乗車前に定期的に個人認証を求められる顔認識技術のローンチを計画していると明らかにした。また Uber は以前から、ドライバーに対し強制的に6時間オフラインにして休憩を取らせ、運転席にいる時間を12時間までに制限することで、疲労に対する(乗客の)不安を緩和しようとしてきた。

一方で Yandex は Uber の推移を注意深く見つめ、この大手競合が嵌った落とし穴を避けるため多くの技術を開発してきた。

居眠り運転

Yandex はドライバーの注意レベルを監視する、AI が組み込まれた独自のハードウェアやソフトウェアを粛々と開発してきた。同様の技術はスバルのレガシィ2020のような新しい高級車には組み込まれているが、Yandex のものはどんな自動車にも追加導入することができ、同社は配車サービスのドライバーにこの技術を利用してもらいたいと望んでいる。このシステムは中国の配車サービス大手 Didi が現在テスト中のものと似ているという点は注目に値する。

あらゆるフロントグラスに装着できる Yandex のカメラ「SignalQ1」
Image credit: Yandex

同社の SignalQ1カメラはドライバーの顔の68のポイントを見て、ドライバーが疲れたり気が散ったりしたら、機械学習の手を借りてそれを検知する。実行するためには、システムは瞬きや欠伸といった要因を見て、それが眠気や注意力散漫のためであるとする。

居眠り運転を阻止すべく、Yandex はドライバの注意を引くコントロールカメラを試験している。
Image credit: Yandex

このシステムは現在モスクワで少数の自動車でテストされている。今のところアラートはビープ音に限られているが、将来的にはカメラはドライバーの Yandex アカウントと直接リンクすることとなり、つまりドライバーが安全ではないと見なされれば同社が事前的に行動を起こすことができるようになる。

Yandex.Taxi の EMEA と CIS のリージョナルゼネラルマネージャーである Aram Sargsyan 氏は、ロンドンで今週(2月第3週)開かれた Move 2020モビリティカンファレンスでこう言及した。

ドライバーが疲れれば、通知が届き、休憩を取るまで乗車のオーダーを受け取ることができなくなります。

18か国にわたって数十万人のドライバーがいるとする Yandex.Taxi の主張を考えれば、この種の技術を大規模に開発することは困難が伴うかもしれない。しかし、Yandex はドライバーが同社プラットフォーム上で自分の車を用いて営業できるようにしている一方で、多くの市場ではタクシーと直接的に協力もしており、この点では大規模な展開がしやすいと言えるかもしれない。Sargsyan 氏は VentureBeat にこう語った。

弊社はパートナーと協働し、この技術を一斉に実施する方法を見つけ出すことができるはずです。

詐欺

また Yandex が開発の初期段階にある顔認識システムは、Uber のものと同様に、実際にハンドルを握っているのが誰なのかを識別するものである。Sargsyan 氏はこう述べている。

開発のテスト段階にあり、弊社は最適化させようとしているところです。

専用のハードウェアを要求するのではなく、Uber や Didi がすでにやっているように、Yandex もシンプルにドライバーのスマートフォンのカメラを使うつもりだ。しかし Yandex はさらに一歩進めて、実際のドライバーと登録アカウントをマッチさせる音声認識スマート機能をテストしている。

ドライバーの身元詐称が Yandex の市場でどの程度蔓延しているのか、Sargsyan 氏は明確なことは言わなかったが、「問題が存在していることは分かっている」と述べた。

Yandex にとって主な懸念は、同社がサービス展開するほぼ20の市場で、様々な規制当局が問題視し始めるかもしれないということだ。ロンドンにおける Uber の苦労からヒントを得て、同社はこういった悪習が今後大問題へとエスカレートしないように努めている。

弊社が運営している18の市場には当局が厳しいところもありますが、TfL ほど厳しくはありません。ですので弊社はこれが問題になるまで待つのではなく、今解決しようとしているのです。(Sargsyan 氏)

Yandex はドライバーがスピードを出しすぎると通知を出す速度制御システムのような、他の自動安全性技術にも取り組んでいる。Sargsyan 氏によれば、このローンチの後ではスピード違反が12倍減少した。ドライバーの道路上の行動を監視するテレマティクスデータを以前から使っている Uber と同様に、Yandex もドライバーの運転の仕方を追跡し、不安定だったり攻撃的だったりする行動を示したドライバーは営業停止にすることもあり得ると述べている。

自動運転車への到来に向かってゆっくり進んでいるが、Yandex.Taxi が仲間入りをしたいと非常に強く思っている世界は自動運転で200万マイルを過ぎたばかりだ。安全性やセキュリティを高めるための取り組みは協力して行われている。結局のところ、真に自動運転の自動車が社会に浸透するまではまだ何年もかかるようだ。

自動運転車が一般的なタクシーやカーシェアリングに取って代わるまでは、弊社は安全性向上のためにあらゆる可能な技術を使わなければならないのです。(Sargsyan 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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