SpiralとセイノーHD、「Value Chain Innovation Fund」を組成——100億円規模目指す

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前列左から:岡洋氏(Spiral Innovation Partners 代表パートナー)、奥野友和氏(Spiral Capital 代表パートナー)、田口義隆氏(セイノー HD 代表取締役社長)、河合秀治氏(セイノー HD オープンイノベーション推進室室長)
後列左から:松本泰拓氏(Spiral Innovation Partners プリンシパル)、前田信一郎氏(Spiral Innovation Partners シニアアソシエイト)、鎌田和博氏(Spiral Innovation Partners パートナー)、髙橋一馬氏(セイノーHDオープンイノベーション推進室主任)、山根彰夫氏(セイノー HD オープンイノベーション推進室課長)
Image credit: Seino Holdings

Spiral Capital のオープンイノベーションに特化した子会社 Spiral Innovation Partners とセイノーホールディングス(東証:9076、以下、セイノー HD)は、「Value Chain Innovation Fund」を組成したと発表した。GP は Spiral Innovation Partners、当初 LP はセイノー HD の1社のみで、ファンドサイズは70億円規模。今後、金融機関を中心に資金を追加調達し、最終的に100億円規模を目指す。

Value Chain Innovation Fund は、2020年1月に発表された Logistics Innovation Fund の2号的な位置付けになるファンドだ。以前は、LogiTech と名前にある通り、物流テック(LogiTech)に特化したスタートアップに投資を実行していたが、前回ファンドから、オンライン薬局のミナカラ(2021年10月、NTT ドコモとメドレー=東証:4480により共同買収)、レンタルプラットフォーム運営の TENT に出資したことにも象徴されるように、出資先を多様化することを意図して名前が改められた。

セイノー HD は岐阜・大垣に本社を置き、地元金融機関である十六銀行(東証:7380)と大垣共立銀行は(東証:8361)は、セイノー HD のメインバンクであると同時に大株主でもある(有価証券報告書によれば、十六銀行と大垣共立銀行のセイノー HD 株式持分はそれぞれ3.16%と1.96%)。前回の Logistics Innovation Fund には両行が出資したことが明らかになっており、今回も同様の調整が続けられているとみられる。両行は独自でも、NOBUNAGA キャピタルビレッジや OKB キャピタルといった投資ビークルを持つ。

セイノー HD によれば、ファンドが(GP1社、LP1社の)2人組合ではなく、LP に金融機関が加わることで、ファンドサイズを大きくし、出資を受けるスタートアップに対しても特定の一社の色に染まることを避け、よりニュートラルな目線で投資を進められるようにする意図があるという。つまるところ、投資元と投資先の事業連携の親和性もさることながら、純投資でのリターンも積極的に狙っていくということのようだ。

Image credit: Seino Holdings

前回の Logistics Innovation Fund からはスタートアップ17社と FoF(ファンズ・オブ・ファンズ、Spiral Capital のジェネラルファンドへの出資)への投資が実行されたが、今回のファンドでは20〜30社への投資を狙う。チケットサイズは前回から大きな変更はないようなので、アーリーで1.5億円、ミドル・レイターで2.5億円ということだろう。新ファンドからはすでに、スタートアップ2社(うち1社は在庫分析クラウドのフルカイテン)とファンド1社への投資を実行したとしている。

セイノー HD の執行役員でオープンイノベーション推進室室長の河合秀治氏は、BRIDGE とのインタビューで次のように語ってくれた。

我々がスタートアップに出資し、共創に参加してもらうことで、さまざまな実証実験がやりやすく、そこにはクライアントもいるので、スタートアップにはうまく活用してもらっていると思う。

在庫最適化サービスをはじめ、スタートアップが新しいサービスを上流で生み出せば、物流では下流にいる我々は大きな変化の影響を受ける。グリーン物流で新技術が求められ、仕組みや規制も変化していく中で、スタートアップとの共創をより進めていきたい。

Logistics Innovation Fund からは、企業間物流最適化の Hacobu自動搬送ロボット開発のの LexxPluss物流ラストワンマイル効率化の207 のほか、珍しいところでは、オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」を運営する eiicon がパーソルイノベーションから MBO する際に出資を受けた。出資先からはミナカラがイグジット、ダークストア運営のクイックゲットは3月、サービスを終了し破産が明らかになった。

セイノー HD は昨日、和歌山県日高川町、Logistics Innovation Fund 出資先のエアロネクスト、エアロネクストのドローン配送サービス戦略子会社 NEXT DELIVERY と共同で、日高川町の美山地区と中津地区で、新スマート物流「SkyHub」のサービスを開始した

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