誰のためのサービスかを常に考える−−ネコメシ山本氏が語る「UXデザインに必要なユーザ視点」

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ウェブサービスはリリースするだけではなく、実際に使ってもらうことで価値が出てくる。そのためには、いかに使いやすいサービスであるかが大事であり、UXを踏まえながら、受け手全体の満足度を最大化する発想をもって情報設計をしていかなければいけない。

ネコメシのディレクター兼UXデザインエンジニアの山本郁也氏は、インフォメーションアーキテクチャやUXデザインの領域で活動する一方、人間中心設計推進機構やヒューマンインターフェース学会の会員でもあり、個人でもスタートアップ企業へのウェブ制作支援をおこなっている。

山本氏がMOVIDA SCHOOLで語った、UXデザインをおこなう上で必要なユーザ視点についてまとめた。

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人ぞれぞれその時々で欲しいものは違う

マーケティングの世界で古くから使われている格言に「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」という言葉がある。しかし、人は必ずしも穴だけが欲しいかというとそうではない。ドリルを持っているだけいいと思う人、かっこいいドリルで穴を空けたい人、今すぐ穴を空けたい人など、人それぞれによって変わってくる。答えは一つではなく、誰がそのサービスをどんな時に使いたいかを考えなければいけない。

バイアスを壊せ

私たちは、主観をもとに偏った考えを持ってしまっている。それを意識した上で、様々な判断をしなければいけない。例えば「確証バイアス」と呼ばれるものは、自分の都合のいい情報ばかりを集め、自分の意見の正当化しようとしてしまうことだ。

他にも、成功している人の意見を聞きやすい「生存者バイアス」というものがある。成功している人は、自分がなぜ成功したのかをしっかりと論理的に話せる人は意外と少ない。成功者の言うことが正しいとは限らないため、すべてを鵜呑みにしてはいけない。

すべてを疑うこと

ユーザに聞けばなんでも分かるという思いは捨てよう。確かにユーザテストは大事だが、そのテストがどれだけ信頼性の高いテストなのかで結果は変わってくる。カール・マルクス氏が「Doubt Everything(すべてを疑え)」と語ったように、バイアスもユーザテストも含めた、あらゆる情報あらゆるデータに対して、余裕を持って全てを疑い検証しようとする視点を持つことが大事だ。

サービスのコンテキストを揃える

ウェブサービスは、サービスのコンテキストに沿って設計しよう。なぜそのボタンを押すのか、そのボタンを押すと何が起きるのか。文言一つで、ボタンを押すときのモチベーションも変わってくる

サービス内におけるブレがないよう、コンテンツのルール化を図らなければならない。ルールが多すぎると、コンテンツを認知できなくなるため、無駄なルールを排除し、正しいゾーニングとカテゴライズによって、使う人が迷わずに正しい行動をとれるための設計にすることが大事だ。

伝えたい情報を過不足なく伝えること

コンテンツのルール化が図られることで、伝えたいことが過不足なく伝えられることができ、使う人にとって知りたい情報がすぐに手に入るようになる。伝えたいことがきちんと伝えられることができれば、どんなにサイトが変化してもUIは破綻することはない。スケーラビリティを踏まえながら、コンテンツが増えてもUIのクオリティを変化させないよう、きちんとサイトの情報を整理し、サイトの根本的な基盤を支えるものを考え、体系化することだ。

リニューアルしたら良くなるわけじゃない

ウェブサービスにおいて、リニューアルすると良くなると思う人もいるが、ただリニューアルをしても意味が無い。コンテンツが良ければ、見せ方の設計を変えるだけで、ユーザの満足度やコンバージョンは大きく変化する。サービスの何が悪いのか、根本的な解決を考えてその上で判断してもらいたい。

個人でアドバイザーとして携わっているLang-8では、テキストの見直しやラベルの見直し、フォントサイズやマージンの調整、デザインルールの調整などの修正を実施し、大きなリニューアルはしていないが1ヶ月前に比べるとほとんどのパーツが変更されている。その結果、投稿数や有料会員数などの数字も伸びた。

カスタマーが悩まない設計をする

既存顧客というのは、いわゆるロイヤルカスタマーだ。そうしたカスタマーに混乱を与えないよう、すべてをいきなり変えるのではなく少しづつ修正をし、いつの間にか全体が変わることで、リニューアルせずとも数字としての結果を出すことができる。

カスタマーは、使いたいからそのサービスを使っているだけだ。だからこそ、カスタマーが悩まない設計にしなければいけない。

そのサービスは、誰のためのサービスか

誰のためのサービスか、常に意識しよう。ウェブサービスは、サービスを提供する側と受給する側とに別れるからこそ、受け手の意識を常に考えなければいけない。今は、サービスそのものを見直す時代になってきている。だからこそ、一方的ではなく相手のことを考え、マクロな視点でサービス全体を設計しなければいけない。

起きる「コト」をデザインする

サービスを提供する側は、顧客のことをおもいやってデザインしていくことが重要だ。 こうした「おもいやり」の発想は、これまで日本人が大切にしてきたものだ。

見える「モノ」だけではなく、起きる「コト」をデザインし、受け手が感じる体験をいかに設計していくか。顧客にとって「やさしいウェブサービスづくり」を、ぜひ目指してもらいたい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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