UX(ユーザーエクスペリエンス)を大切にすることは、インターネットの未来を守ること【ゲスト寄稿】

この記事を寄稿をしてくれたのは株式会社ネコメシのインフォメーションアーキテクトの山本郁也氏。山本氏はよく編者にユーザーエクスペリエンスや情報環境に関しての考えを聞かせてくれ、それは編者にとって大きな気付きの機会となっている。そんな彼に、UXを重視すべき理由と、インターネットの未来に与える影響について寄稿していただいた。

山本氏は起業家による事業創造プラットフォーム「Beenos」でDesign Fellowも務めており、Beenosのサイトに掲載された「創業者がUX(ユーザーエクスペリエンス)の全責任を背負うべき」というインタビュー記事も必読。


Some rights reserved by IntelFreePress
Some rights reserved by IntelFreePress

みなさんにとってインターネットとは何ですか? 少し思い浮かべてみてください。

近年、「UXデザイン」や「インバウンドマーケティング」といった言葉をよく耳にします。なぜ今、こうした言葉が多く使われるようになったのか。

実はどちらも、根本的な思想はとても似ていて、こちらが提供したいものを一方的に提供するのではなく、ユーザーの欲しいものを提供しようという、Customer Centricな考え方です。

今必要なのは「Customer Centric」なマインド

UXデザインやインバウンドマーケティングにおいて、重要なのは、その手法ではありません。大事なのは、制作者としての姿勢そのものです。これらの実践の為には、まず、Web制作者・Web開発者としての姿勢を変える必要があります。UXデザインやインバウンドマーケティングとは、提供する側の「姿勢」のパラダイムのシフトなのです。

UXはそもそも研究者の間で研究対象になるような、専門用語です。工学的に、デザインをしようとするものです。何せ、デザインする対象はユーザーの体験です。そう簡単にデザインできるわけがありません。デザインと呼ぶ以外に、アーキテクチャと呼ぶこともありますし、ストラテジーと呼ぶこともあります。

ユーザー目線になるには?

UXについて語られるとき、「ユーザー目線」という言葉が登場します。

では、どうやってユーザー目線になるのでしょうか?どうやってユーザーの気持ちになれと言うのでしょうか?ユーザーの気持ちになって妄想すれば良いのでしょうか?

ぼくたちに「ユーザー目線になる」なんて、そんな芸当ができるわけがありません。だってぼくらは、とてもITリテラシーの高い、Webの専門家だからです。そんなスーパーユーザーが、一体どの程度いるというのでしょうか?

ぼくらにできることは、ユーザー像を明確にして、仮説をたてることだけです。そしてそれは本来、何となく、感覚ベースで行われるべきものではなく、工学的に行われるべきものです。昔なら、何となく一方的に主観でつくったものでも、意味がありました。しかし、パラダイムがシフトしたことにより、状況は変化したのです。

作り手に求められる姿勢

Some rights reserved by hackNY
Some rights reserved by hackNY

ぼくは、開発もデザインも経験して来ました。一人でWebサービスをつくれと言われたら、つくることはできるでしょう。もちろん、それぞれの専門職の方々より、一つ一つのクオリティは落ちるし、作るのに時間もかかると思います。でも、つくることは可能だと思います。

スタートアップのアドバイスやサポートなどをしていると、よく、「自分で何かサービスはつくらないのですか?」と聞かれることがあります。ぼくはいつも決まってこう答えます。「つくらないですね」、と。

ぼくは、Webサービスやアプリをつくりたいのではありません。インターネットそのものを、人々の為の、より良いデジタルインフラにしていきたいと思っています。専門家による専門家の為のインフラではなく、老若男女問わず、人々の生活を豊かにするためのインフラを作っていきたいのです。

今、僕たちは何を作るべきか

この時代は、情報革命の時代と呼ばれています。このように革命期間が長く、ものすごいスピードで、世界中で進化し続けている革命は、人類の歴史上、存在しないと言われています。そんな中で、ぼくらはその領域で仕事をしていて、そして、革命の真ん中にいる。本当に貴重な体験をしていると思っています。

昔、THE BLUE HEARTSというバンドが歌っていました。「未来は僕等の手の中。」今、本当にそう思います。

ぼくらの子どもとなる世代の幸せの鍵は、ぼくらこそが握っているのではないでしょうか?なぜなら、デジタルサービスには世界を変える可能性があり、世界が変わる可能性がある。そしてぼくらはその領域で仕事をしている。

もしも、ぼくらの子どもがデジタルによって嫌な目に遭って、悲しんだり、つらい思いをしたりしたら、それはぼくらのせいだとは考えられないでしょうか?

インターネットは本当にすごいものです。人を生かしも、殺しもします。そして、それをつくっているのは、紛れもなくぼくたちです。ぼくは、世界の70億人の為に、より良いデジタルインフラをつくりたい。ぼくなんかの小さな一生では足りないかもしれないけども、それでもできるだけのことをしたい。

建築家ルイス・カーンが言っていました。

「都市とは、小さな子供が歩いていくと、将来一生をかけてやろうとするものを教えてくれる何かに出会う、そんなところだ。」

ぼくはインターネットをそんな場所にしたい。

ぼくにとっての「インターネット」は、こんな感じです。
あなたにとっての「インターネット」は、どんなものですか?


picture山本郁也。株式会社ネコメシ インフォメーションアーキテクト。株式会社ネットプライスドットコム Beenos本部 デザインフェロー。特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構 正会員。特定非営利活動法人 ヒューマンインターフェース学会 正会員。IA Institute(US)会員。東京電機大学 建築・環境計画研究室 連携研究者。UX Tokyo所属。

楽天株式会社やフリーランスを経て、株式会社ビジネス・アーキテクツに入社。ソフトウェアデザインエンジニアとして、幅広い業務に従事し、2010年退職。その後、株式会社ネコメシに合流し、平行して、株式会社ネットプライスドットコムのインキュベーション・プログラム「Beenos」へデザインフェローとして参画。 IA/UXデザインの領域から、Webサービス開発支援を行う。


編者:モリジュンヤ