ベルリンを拠点にグローバルなチームを率いる「AirMarkr」ファウンダー 田中美保さん【後編】

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本記事は、ベルリンと東京のスタートアップシーンをつなぐプラットフォーム「bistream」からの転載です。前編はこちら。

mihotanaka02AirMarkr ファウンダー、田中美保さん

世界各地の優秀なメンバーがAirMarkrに集まる

田中さん一人で立ち上げたAirMarkrも、イベントやカンファレンスなどを通じて外部に露出する機会を増やし、少しずつ人脈を築くなかで、協力してくれる仲間が増えていった。

AirMarkr のプロトタイプ開発に協力してくれたSandra SchumannさんとAndres Erbsenさんは、ベルリンのスタートアップイベントhy! Berlinが主催するサンフランシスコツアー中に人づてに紹介してもらった「数学の天才」だ。当時、高校生だった二人は、卒業前に AirMarkr のプロトタイプづくりに協力してくれた。そのプロトタイプは、国際カンファレンス Augmented World Expo で発表。勉強のためにも、そういう機会にはどんどん参加していった。

AirMarkr は現在、彼女と数名のメンバーが集まって開発にあたっている。以前NASAで衛生通信の開発に携わっていた Conor Haines さんがCTOとして参加。人工知能と群ロボット工学を専門に研究する Roman Miletitch さんもチームに加わった。こうした世界各地の優秀な人材ががAirMarkrに参加するのも、それだけビジョンに惹き付けられるものがあるからだろう。

昨今、モーショントラッキング技術の活用に対する注目度は高まっており、アプリ開発に使用できる精度の高いSDKも増えている。だが、AirMarkr が開発の際に掲げるビジョンは、あくまで人間とデバイスを自然につなぐこと。そして、AirMarkr を使うことによる「楽しさ」を生み出すことだ。

airmarkrteamAirMarkrチームのミーティング。CTOのConor Haines が最新のプロトタイプをチームに共有しているところ。ミーティングは基本的にビデオ会議で行っている。

ミュージシャンImogen Heapとのコラボレーション

最近ではイギリスのミュージシャンImogen Heapとのコラボレーションで注目を集めた。Imogen Heapといえば、「音を奏でるグローブ」をキックスターターで資金募集したことが話題になったが、彼女のパフォーマンスのビジュアル製作にAirMarkr が参加したのだ。

Imogenがグローブで演奏する音楽に合わせて、AirMarkrのメンバー Roman Miletitch さんがリアルタイムでビジュアルを加え、共に表現空間をつくりあげていった。

imogenprojectミュージシャン Imogen HeapとAirMarkrのコラボレーション (Photo credit: Adrian Lausch)

「自分がまったく知らない言語と文化のある国に行きたかった」

もともと、田中さんがベルリンにやってきたのは、今から約4年前のことだ。

渡独前は、ニュージーランドのクライストチャーチで、デジタルコミュニケーションを使ったマーケティングの仕事をしていた。彼女は、クライストチャーチの研究機関Human Interface Technology Laboratory New Zealand(HITラボNZ) を前身とする Motim Technologiesで、AR(拡張現実)を活用したアプリのアイデアづくりに関わっていた。

新しい形の人間とテクノロジーのコミュニケーションをテーマに研究を進めていたHITラボNZの試みに、田中さんは長いあいだ興味をもっていた。彼女は HITラボNZ の人々と少しずつ人脈をつくり、「一緒に仕事がしたい!」とアピールし続けた結果、マーケティングツールとしてのアプリのアイデアをつくる「コンセプター」というポジションをつくってもらったのだという。

一方でこの時期、仕事は充実していたものの、これまでの環境とはまったく異なる場所で暮らしてみたいという思いも募っていた。「自分がまったく知らない言語と文化のある国に行きたかったんです」田中さんは言う。そうした観点からベルリンを選び、渡独を決意。とはいえ渡独直前には、クライストチャーチでの充実した仕事、素敵なフラットをあきらめ、気の置けない仲間の元を去ることに対する不安が押し寄せてきたという。

だが、そんな不安もベルリンに到着して、すぐに吹っ飛んだ。

「ベルリンに到着したのが10月だったのですが、本当にすばらしい季節で。紅葉で黄金に輝く街を見て、ああこの街が大好きだって感じて。その瞬間にベルリンに恋したんです」

発達した都市ながらも緑が豊かで、坂の少ないベルリンは、どこか故郷クライストチャーチを彷彿とさせるという。

「スタートアップをやる上では、ベルリンはとても良い場所です。イベントも多いし、色々な人がつながっていく場所だから」

現在 AirMarkr のメンバーは世界各地におり、普段はビデオカンファレンス等を通してプロジェクトを進めている。それでも、田中さんはベルリンを離れるつもりはないそうだ。

「ベルリンがとにかく大好きなんです。特にスタートアップをやる上では、ベルリンはとても良い場所です。イベントも多いし、色々な人がつながっていく場所だから」

そんな彼女自身もまた、ARのミートアップ「AR Berlin」を主催し、ARに興味のある人々の集まる場をつくっている。

なにげない友人との会話がきっかけで生まれた AirMarkr のアイデアだが、ハッカソンを通じて息が吹き込まれ、イベントへの参加など地道な行動を重ねることで、共感する仲間も増えていった。田中さんの情熱と行動力によって、形づくられ、膨らんでいった AirMarkr の次なるターニングポイントはどこになるのだろう? 今後もきっとまた、AirMarkr に関するエキサイティングなニュースを届けることができるはずだ。