
Image credit: TechNode(動点科技)
A株上場のコミュニケーションエージェンシー Shunya International Brand Consulting(宣亜国際)が、中国の主要ライブストリーミングサービス「Inke(映客)」の少なくとも50%の株式を取得したことを発表した。
Shunya の発表によれば、この取引には設立者チーム、役員、投資機関が所有する株式の交換も含まれるという。また、この取引が現金ベースで行われ、1か月以内に完了する予定だとも付け加えている。この取引に関わる株式についてこれ以上の詳細は明らかにされていない。さらに、同社は地元メディアに対して次のように述べている。
(略)Inkeのビジネスモデルは大きな困難に直面しており、同社のエンタープライズ向けビジネスを推進する能力のあるパートナーが必要でした。
Shunya は、デジタルパワーコンパートメント、ブランドコミュニケーション、広報、広告、実験的マーケティング、データマーケティングその他ビジネスソリューションなど幅広い通信ソリューションを提供している。
TechNode(動点科技)は Inke にコメントを求めており、同社からのコメントがあり次第更新する予定。
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この分野への早期参入者として、Inke はこの2年間、中国のライブストリーミングブームに乗って急速に成長してきた。市場の力とチームの力が合わさり、Inke は中国で最も多く投資を集めたスタートアップの一社となった。同社の資金調達の道のりを列挙すると以下のようになる。
- 2015年7月:A8.comによる1,000万人民元のエンジェルラウンド
- 2015年11月:SAIF Partners China(賽富中国)、GSR Ventures、Buttonwood Capital による8桁(つまり1,000万を超える)人民元のシリーズAラウンド
- 2016年1月:オンラインゲーム会社 Kunlun(崑崙)がリードした8,000万人民元のシリーズA+ラウンド
- 2016年9月:GX Capital(光信資本)がリードした2億1,000万人民元のプレBラウンド
最近の取引において、Inke の投資家 Kunlun(崑崙)が2016年9月に株式の3%を2億1,000万人民元で売却しており、これは Inke のバリュエーションが9か月で17倍以上の70億人民元に急上昇したことを意味している。これは Shunya が昨年株式公開したときのバリュエーション72億人民元にほぼ匹敵する。
バリュエーションは急上昇したが、Kunlun の株式売却が暗示しているのは、Inke が収益に問題を抱えていることだった。2015年の同社の売り上げは3,048万人民元に過ぎず、純利益は167万人民元にとどまっていた。
中国で盛り上がっているその他のバーティカル市場と同じく、ライブストリーミングは中国テック大手企業の代理戦争の戦場の一つだ。大企業の後ろ盾のある競合他社と異なり、Inkeは 単独で運営しており、また同社の天文学的な評価額は、他社が Inke を支援するのをさらに困難にしてしまっている。

2016年は中国のライブストリーミング業界において「元年」と呼ばれていた。当時、200を超えるライブストリーミングサービスが林立しており、そのうち半数は資金投入を受けていた。しかし、ライブストリーミングの熱狂が冷め業界の規制が強化されることで、中国のライブストリーミング市場は、小規模のプラットフォームが消え去っていくノックアウトラウンドの段階に入ってきている。
アプリのアクティブユーザがピーク時に1日2,500万人を超えていたという Inke のようなトップレベルの企業であっても、資金により事業を回すキャピタルドリブンモデルを維持するのは困難である。Inke の毎月の操業費用はおよそ1億人民元に達していたと設立者の Feng Yousheng(奉佑生) 氏は昨年9月に地元メディアに語っている。
同社はまた今月初め、アプリが Apple のアプリストアから削除されるという問題にも突き当たった。実はこれはAppleによる3度目の削除であり、以前の2回は2016年の1月と2月に起こっている。
Inke には、今年2月15日に評価額72億人民元で上場した Shunya の傘下に入る以外の選択肢はほとんどないようだ。
実はこの2社のタイアップは4月の初めから噂されていたが、当時 Inke はこのニュースを否定していた。両社は3月にジョイントベンチャーを立ち上げ、ライブストリーミングプラットフォームにおける広告ベースのビジネスモデルの開拓と、広告のクライアントとなる顧客獲得を狙っていた。
Inke の設立者F eng 氏は3月、地元メディアに次のように語っている。
(略)ライブストリーミングは広告、eコマース、メンバーシップ、付加価値サービスなどあらゆるビジネスモデルに対応できますが、今でも最高のパフォーマンスを達成しているのは広告です。
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