
本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。若手起業家向けの勉強会を定期的に開催中
20代起業家を対象に、彼らが考える新しいスタートアップのあり方を聞き出すインタビューシリーズ、前回登場のチャット小説アプリ「Balloon」運営、FOWD代表取締役の久保田涼矢さんに続いてはバーチャルYouTuber「ミライアカリ」がヒットしたZIZAI代表取締役、塚本大地さん。
今回もUpstart Ventures、上杉修平さんにインタビュワーとして参加してもらい、お話をうかがってきました(太字の質問は全て上杉氏。執筆・編集:平野武士)。
塚本大地さん:1993年生まれ。小学生から大学までサッカーに打ち込み続けたサッカー少年で、名古屋大学在学中に部活をする傍ら、アプリ制作などを手がけるDUOを創業。2018年に立ち上がったVR事業でプロデュースした「ミライアカリ」がヒット。バーチャルライブ配信プラットフォーム事業とアミューズメント事業の2事業を展開
塚本さんはこれまで大きな外部資本入れずに自主独立で会社経営されてるんですよね。立ち上がりってどういう感じだったんですか?
塚本:最初は大学時代に趣味でウェブサイトやメディアを作っていたんですが、ある程度のキャッシュが必要になったので、個人的に1500万円ほどを借りて事業を運営していました。
当時はGunosyが好きだったということもあって何かの領域に特化したバーティカルメディアに可能性を感じていました。そこで広告費をかけていて競合が少ない領域を探してみたらパチンコ業界を見つけたんです。
なるほど、それでエンターテインメント関連のアプリを手がけることに
塚本:パチンコ業界のGunosyのような感じです。ただ、アプリ制作のコストが思ったよりかかってしまい、あっという間に1000万近く溶かしてしまいましたが(笑。
痺れますね(笑。レガシー産業から勝てる領域を探し当てた。重要視していたことってどういう点でしたか
塚本:一発目に関しては既存にあるフォーマットの焼き直しで、なおかつ自分たちが付加価値がつけられるような事業を考えていました。ある一定数の競合が儲かっていて、彼らの50から70%程度でもそれでもまだ儲かるみたいな領域ですね。限りなく確率が高い領域を選ぼうと。
今はミライアカリなどのVTuber事業が好調ですよね。ここに目をつけたきっかけは
塚本:そもそも開始した当時、「ライブ配信×投げ銭」のビジネスモデルはすでに流行っていいました。人って誰もが自己を表現したいはずです。じゃあ、キャラになってライブ配信すればいいじゃんって。そしたらタレントとかモデルじゃなくてもできる。こんな感じで立てた仮説でしたが、今のところ全部あってますね。
それでもこのテーマは多種多様な方々が参入してきてあっという間にレッドオーシャン化しつつあります。事業推進で大事にしていることは
塚本:競合や類似サービスの成功事例、失敗事例はしっかり分析し、良いところは取り入れ、悪いところは同じことをしないようにする。そうしたうえで、少しのオリジナル要素を加える。グロースさせていく過程で失敗要因になりうるものを事前に想定してひとつづつつぶしていく。こんなところでしょうか。あと、プロダクトマネジメントの細部には介入せず、ある程度はみんなに任せるっていうのも大切ですよね。
あと、再現性をもって語れるのは結構重要だと考えています。感覚だけでなくみんなが納得するロジック、他がやっていないロジックやこれをやったらうまくいくというようなロジックは結構必要なんじゃないかなと。
一方でIRIAMは全く逆のアプローチでした。変数も多いし、コストもかけなければいけない難易度は高いものの、未来からの逆算で事業を作ったっていう事例ですね。
話を少し変えて。塚本さんにメンターみたいな方っていらっしゃるのですか?
塚本:いや、いないですね。敢えて言えばサイバーエージェントの藤田晋さんの「渋谷で働く社長」と「リクルートのDNA」を読んで、こういう会社に入ろうと思った、というのはあります。
ただその後にインターンに行ったんですが、思っていた期待値と違ったんですね。それで就職しないという決断をして…。まあ、あと留年したのと大学院進学に必要なTOEICを受けてないっていうのもあって。起業の道しか残ってなかったっていうか(笑。
でも思想的に影響は残った
塚本:自分たちだけが正しいとは思っていないし、どちらも正解だと思っていますが、意外と今大きくなっている会社も最初は泥臭い事業から始めていたりするじゃないですか。そういう影響はあります。実際サイバーエージェントも広告代理店のような事業から始めていて、僕はイノベーションの基本には、商売が上手いことが前提にあるのではないかと思っています。
元々商売って好きだったんですか?
塚本:そうですね。小さいころから商売というか、人の心を動かすのが好きなんです。価値を提供して人の心を動かした結果、会社に利益が生まれる。社会に与えられるインパクトをどんどん大きくしていって、自分の目で見れる世界を少しでも広げたい。
世の中にこんなニーズがあるんじゃないかっていう仮説を立てて、それを実際プロダクトにして検証するのが楽しすぎるんですよ。結果を残せばより面白い人や世界に触れる権利がもらえるってのが根本にはあります。
同年代で気になる存在は
塚本:クラシル創業者の堀江(裕介)さんですね。シンプルに悔しいです。事業、組織、ファイナンス、人間性、ビジョン、スピード感、すべて出来ていて意外とバランスいい。しかも慢心せずどんどん前に進もうという姿勢が好きです。と言ってもよくコミュニケーションとるわけじゃないですが。
最後に。最近創業時の社名DUOから「ZIZAI」にコーポレートを変更されましたよね。特に好きなのは「まずリスペクト」「困難を遊べ」です。めちゃめちゃポジティブで前向きな会社なんだなというのがすごい伝わってきます。とはいえ社員数もかなり多い中で、どうやって浸透させているのでしょうか
塚本:ありがとうございます。人間はどっかで良いヤツになりたいってどこかで思っているし、自分も完璧ではないもののそうありたい。だからこそポジティブな、性善説に基づいたミッション・バリューになってるのだと思います。良い人と触れ合っているとみんな良い人になっていくと思うんですよ。誰かがそういう風に振舞っていたら、良い振る舞いは伝播すると思っています。
これからの活躍期待してます
塚本:まずは日本でナンバーワンのバーチャルライブ配信プラットホームになって、世界も取りにいきます。
ありがとうございました。
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