インフキュリオン、カード即時発行プラットフォーム「Kyash Direct」を事業譲受

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左から:インフキュリオン代表取締役社長の丸山弘毅氏、Kyash 代表取締役 CEO の鷹取真一氏

各種フィンテックサービスを提供するインフキュリオンは27日、送金・決済システムを開発する Kyash(キャッシュ)が開発・運営するプラットフォーム「Kyash Direct」を事業譲受したことを明らかにした。譲受金額や譲受契約の詳細については明らかにされていない。

Kyash Direct は昨年4月に Kyash が発表したプラットフォームで、RESTful API/SDK 経由により、イシュイング(カード発行)・プロセシング(決済)・プログラムマネジメント(運営)をワンストップで提供。カードに複数のファンディングソース(カードに引き当てる資金源のこと。デビットカードであれば引落に使う残高のある銀行口座、クレジットカードであれば与信枠など)を引き当て、用途別、決済金額の規模など条件に応じて、ファンディングソースをダイナミックに切り替えることができる。オーソリ電文についても、Web サービスが扱いやすい JSON 形式に変換して提供する。

Kyash Direct を使うことで、企業は自社ブランドのバーチャルおよびリアルの Visa カード発行(バーチャルの場合は即時発行)できるほか、企業が銀行預金や売上金などの金融資産と API 連携し、世界の Visa 加盟店(5,390万店舗)で利用できるようになる。主な用途としては、クラウド費用やオンライン広告料金をカード決済したいスタートアップ(ユースケースとしては BREX のようなもの)、従業員個々にカードを付与し経費支払を簡素化したい企業、仮想通貨を法定通貨に転換して使えるカード(ユースケースとしては Coinbase のようなもの)などが想定される。

Kyash Direct が提供できる機能を説明する、Kyash CTO の椎野孝弘氏(昨年4月)
Image credit: Masaru Ikeda

実際のところ、昨年10月にはクラウドキャストが Kyash Direct を使って経費精算用 Visa プリペイドカード「Staple カード」をローンチした。社内で承認された額が経理担当者によって Staple カードにチャージされるため、従業員による立替、後日の経費精算が必要なくなり、コーポレートカードのような発行時の与信審査も不要のため、低リスク・低コストで全従業員に配布することが可能になる。

インフキュリオンは2006年に設立。コンサルティング部門、金融・決済企業の DX 支援部門を擁し、決済ゲートウェイサービス「Anywhere」、QRコード決済対応ウォレット ASP 「ウォレットステーション」、後払いサービス「SLiDE(スライド)」、自動貯金アプリ「finbee(フィンビー)」、決済業界専門誌「カードウェーブ」を開発・運営し、スタートアップへの投資も始めるなど、フィンテックにおけるコングロマリットになりつつある。

一方、Kyash は2015年に設立。VISA のバーチャルクレジットカードとしても機能する P2P 決済・送金モバイルアプリ「Kyash」を開発・提供している。同社は今年8月、「資金決済に関する法律」に基づく資金移動業の登録を完了したことを明らかにしており、Kyash に何らかの機能が追加されることを示唆している。関係者によれば、Kyash が次に取り組むのはデジタルバンキングとする見方もある。この分野では昨年末、フィンテックスタートアップの WED がチャレンジャーバンクやスマホ銀行への展開を言及した

インフキュリオンの BaaS 概念図
Image credit: Infcurion

今回の Kyash Direct 事業の譲受・譲渡により、インフキュリオンは Kyash Direct を BaaS(Banking as a Service)の一つの機能として組み入れ企業向けの拡販を強化、また、Kyash は売却益を使って、Kyash はコンシューマ向けのサービスのエンハンスに特化すると見られる。

BRIDGE の取材に対し、Kyash 創業者で代表取締役 CEO の鷹取真一氏は次のようにコメントした。

経営方針として、Kyash は消費者向けのサービスを変革させていくのがミッションであると改めて社内で確認し、今回のような意思決定に至った。Kyash Direct については、サービス発表後さまざまな企業からオファーをいただいたが、お譲りすることで、さらに発展をしてもあえるパートナーと組みたいという意図が強くあり、テクノロジーファーストかつ、決済というビジネスドメインや専門知識、経験や信頼関係もあるインフキュリオンに事業をお渡しすることになった。

インフキュリオンは B2B をやっているため、Kyash Direct と親和性が高い。今後の社会の発展を考えたときにも、いいパートナーシップを組めたのではないかと思う。3月に大型調達をしたばかりだが、周辺業務をいろいろやって収益化を図っていくというより、Kyash Direct を持っていることが Kyash にとってプラスになるかどうか、という観点からの判断の結果。恵まれたステイクホルダーのおかげで、今回の経営判断を尊重してもらうことができた。

また、インフキュリオンの共同創業者で代表取締役社長の丸山弘毅氏は次のようにコメントした。

今回、事業を譲受して、まずは、安定運用し、機能拡張し、営業展開していくのが第一だ。Kyash Direct の特徴の一つが、ファンディングソースをダイナミックに選べる点。これはデジタルウォレット、デジタルプリペイド、クレジットなど自由に選べる仕組みとして、金融機関に提供していくことが考えられる。

インフキュリオンは、ファンディングソースを管理する仕組みを提供していることもあり、そこの親和性も考えられる。カードありきの決済システムではなく、決済サービスを純粋なソフトウェアとして捉えられるか。Kyash Direct は、そんなエコシステムを実現する上でのカギとなるだろう。

欧米の決済を中心とするフィンテック業界では、経営資源を特定の事業に集中することを狙って事業買収や再編が相次いでいる。Visa は今年初め、フィンテック企業がアメリカの銀行 API を利用できるようにするサービス「Plaid」を買収した。どのカードに請求するかを、決済後14日間以内なら後日変更できるロンドン発の消費者向けモバイルアプリ「Curve」は、クラウドネイティブのコアバンキングベンダー Thought Machine と提携した