「稼ぐ力」をつけて欲しいークラウドワークス吉田氏が語る7つの事業ヒント

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事業を展開するには様々な能力や資質が問われてくる。ビジネスモデルを構築し、お金を稼ぐ環境をつくりあげなければいけないし、事業のスケールにはアイディアだけではなく、ビジネスとして落としこむ能力が必要だ。

クラウドソーシングサービスを展開しているクラウドワークスは、新しい時代における働き方を支援するためのマッチングサービスとして展開。サービスリリースから僅か8ヶ月でシリーズA3億円の資金調達をおこなうなど、事業を大きく展開している。

吉田浩一郎氏は、クラウドワークス創業前から海外で事業を展開し、出資をうけることなく事業をスケールさせるなど営業と事業推進に対するノウハウをもっている。事業の本質を見極め、どうすれば成長できるか。吉田氏が「MOVIDA SCHOOL」で語った事業に必要なポイントについてまとめた。

ユーザエクスペリエンスの時代

クラウドワークスが日々意識していることは、UXを大切にしていることだ。これまでエンジニアが重宝されてきたが、いまはそこからさらに一歩踏み込み、エンジニアもデザイナーも企画も一緒になって事業をつくっていく意識をもたなければいけない。

かつて車が登場したときを思い出してほしい。それまでは移動を楽にすることを目的にスムーズに走れればよかったものが、そこからカラーや車種などのデザイン重視に移行した。つまり機能性からデザインの時代となった。

しかし、いまや車だけではなく体験を売る時代へと変化してきた。つまり、車単体で差別できる時代でなくなったからこそ、人の体験をどうつくっていくかを考えないといけなくなった。インターネットの事業もまさに同じ。メールやブラウザが登場した時代から、それらが当たり前になった時代にインターネットを通じてどういった体験を提供できるか。

今のインターネットの世界はどこか見たことがあるものばかり。だからこそ、ユーザに何を提供するかを考えないといけない。

コンセプトから課題発見ー改善案実装までを一貫させる

UXを深め、どういった体験をユーザに届けるか。そのためには、事業のコンセプトを明確にしなければいけない。クラウドワークスは「ワンクリックで世界の仕事とスキルにアクセスを」というコンセプトを掲げ、世界にいる人のスキルと空き時間の可視化、それによるマッチングを目指している。

ウェブが当たり前になった時代だからこそ、いつでもどこでも簡単に仕事のやりとりができ、ウェブの仕事をもっと身近に、便利にしていきたいと考えている。

そのコンセプトをもとに、全社員が事業の課題発見をおこなう。入社した者でさえすぐにサイトの使いにくいところを数日かけて洗い出させる。その後エンジニアやデザイナーなど関係なく改善の実装段階まで各人が落とし込む。課題発見から改善案実装までを責任をもって遂行することで、一貫した修正がおこなえる。そのために、最低限のSQLなどのスクリプトを覚えてもらう。

エンジニアのために、非エンジニアは改善案をすべてシートにまとめて可視化させる。そして、なぜ使いにくいかを他のサービスからも比較し研究する。クラウドワークスは、20人ものスタッフと遠隔でやりとりをおこなっている。

エンジニアと非エンジニア間のコミュニケーションの齟齬をなくすために、共通言語によってドキュメントをつくって共有している。これは、作業をするエンジニアに考えさせることがないよう、全員で設計して作業環境をスムーズにするための方法だ。

事業のミッションを見据えること

事業を運営していく上で大切にしたい3つの経営の柱がある。

事業の存在としてのミッション、具体的な事業目標としてのビジョン、そして行動指針としてのバリューだ。事業を展開していく上で一つ一つの行動指針を大事にし、事業目標を確立し、ミッションへと向かっていく。これを会社の三原則にしている。

クラウドワークスのミッションは、これまでの20世紀的な会社という組織形態から、21世紀のワークスタイルをつくりだすことをミッションにしている。これまで、会社という組織ではできなかったことができる社会にしていく。それによって、個人からみた効率化や個人の価値の最大化によって社会の発展と個人の幸せに貢献していく。

そうしたミッションをもとに、事業目標を据え行動指針にまで落としていく。事業としてのミッションといまの状況を常に照らし合わせながら、日々を見つめなおしてもらいたい。

出資をうけなくても事業を進められるという経験

クラウドワークスを2012年3月に創業したが、それ以前まで4年間ベトナムなどで事業をおこなってきた。そのときに、自分の資本だけで運用し、事業を発展させてきた。

クラウドワークス創業後すぐにエンジェル投資家やベンチャーキャピタルから投資をうけた。それは、4年間事業をやってきた中で苦手としているスキルのカバーや、立ち上げ直後の火付けのために自分ではなかなかリーチできない層に対するネットワークをつくるために出資をうけ、共に事業を成長させてきた。つまり投資家に対してお金を求めるだけではない「交渉」ができた。それは出資を受けなくても自己資金でまわせるだけの資本、そして運用できる自信と営業経験があったからだ。そのおかげで、投資家にとっても事業に対する信頼性をもってもらい、投資家とのやりとりにおいても、出資における時価総額に関して有益な交渉をおこなうことができる。

当たり前だが、事業を成長させるためにはお金を稼げる能力をもたないといけない。そのためには、本当に情熱をもてるものでなければ事業は続けられない。日夜事業のことを考え、行動しているか。とくに出資をうける意識をもっているならなおさらだ。しかし、本来は出資をうけなくても自分の力で事業を成長させる気概をもたなければいけない。そうでなければ、事業を進めることは難しい。

お金には3つの種類がある

事業を展開していく上で最初は出資はうけないほうがいい。なぜなら、お金は自分のお金、借りたお金、出資のお金と3つの種類があり、それぞれに意味が違うからだ。

自分のお金はもっておくと貯蓄で増えていく一方だ。しかし、借りたお金は利息が発生するため持っておけばもっておくほど減っていく。できるだけ早く使い、返さないといけない。出資のお金は、利息はつかないが社会的信用がついてくる。お金の使い方を誤ると、それ以降の事業や自分自身の進路にも影響してくる。

同じお金でも扱いが違うということを認識してもらいたい。その中で、自分でしっかりと稼いだお金をもっていることは、相手に信用をもたれ、さらに自分のお金だからこそ試行錯誤できる。

事業家と投資家の利害の違いを把握すること

事業家と投資家(※ここではベンチャーキャピタルの意味。個人投資家のことでは無い。)は良いパートナーシップを組み、ともに事業を成長させていく存在だ。しかし、事業家と投資家が見据えているゴールは違う。事業家は社会に対して最大限の価値を提供していきたいと考えている。その思いに期限はない。

しかし、投資家はいつまでにリターンをだす、というミッションがある。そのために期限が存在する。事業を成長させたいという入り口は同じだが最終的な利害関係が違うのだ。

だからこそ、立ち上げにおいて同じ思いの人たちで基盤をかため、自分たちだけでもやれるという自信と結果をつくっておくことが大事だ。それによって、投資家にどういう力を借りたいかということが交渉できる。事業家と投資家というプロとしての関係性の中でやりとりをおこなってほしい。自分自身でお金儲けができない事業家は、投資家と対等にやりとりはできない。

自己資金を「稼ぐ力」をつけて欲しい

事業の本質は、外側だけ見ていてもまったくわからない。メディアが報じるような華々しい世界は事業の中には存在しない。多くの事業の基本原則は一緒で、人にメリットを提供しお金をいただいて仕事をおこなう。

そのため、事業において最も重要なのは機能やデザインではなく営業だと認識してもらいたい。地道にクライアントに対応し、真摯な態度でやりとりをおこなうことだ。また、オンラインにおいては、例えばサイトの文言一つ、クリックさせたあとの導線一つ変えるだけでもCVRが変わってくる。顧客のためのUXを考え、KPIを設定し、数字達成のための研究をおこなう営業こそが事業を左右する。そのため、実際に営業経験があると強い。目に見えない営業こそ、事業の土台を形成する。

事業の表面にはでてこない地道な営業や努力を通じ、自己資金を稼ぐ力をつけてほしい。そのときに、ファイナンスや投資家とも対等にやりとりができる力がつく。事業の本質を見極め、まわりの綺麗事に惑わされることなく進んでほしい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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