楽天のアジア地域における投資計画についての考察

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近年、アジア地域では3RといわれるRocket Internet、Reebonz、楽天の3社の活動が盛んで、eコマースが伸びてきている。

Rocket InternetとReebonzは巨額の資金で脚光を浴びているが、収益47億米ドルを誇る日本のeコマース大手の楽天は、台湾やタイ、インドネシア、マレーシアを拠点とするスタートアップに1000万米ドルの投資をすると発表した。

Rocket InternetとReebonzは地元のスタートアップの間でそれなりに知られている企業であるが、楽天は少なくとも日本以外では、これから存在感を増そうという段階だ。

楽天の地域計画をもっと理解するため、同社アジア担当CEOである島田亨(Thomas)氏とRakuten Venturesの業務執行社員であるAnh Sae Min氏の2人のシニアエグゼキュティブに話を聞いた。

SGE:楽天は2年後どうなっているでしょう?

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Thomas氏:楽天は、同じ考えを持つ企業に楽天グループに参加していただき、分野や規模、地理的に拡大することによって世界規模の展開を加速的に行なっていきます。

当社は、本業の成長を通じた場合よりも今まで以上に早い展開をしていくことにご協力いただけるパートナーや投資家を求めています。また、電子書籍などの高成長分野に、リソースの配分や積極的な投資を戦略的に行っていくことによって、中長期的な収入の機会を設けていく予定です。

例えば、楽天はKoboを電子書籍のエキスパートとして迎え入れました。また、Wuaki.tvはコンテンツプロバイダーとつながりがあること、ADSは自動倉庫の技術に優れていること、Buy.comPriceMinisterPlay.comなどの企業は多数の上顧客を持っていることなどを評価して招き入れました。

当社はこれからも同じような展開をしていきたいと考えています。当社の短期的目標は、当社特有のB2B2C取引による「仮想ショッピングセンター」のモデルに「おもてなし」という日本の文化に根差した高いサービス精神を加えることにより、私たちが今までに成し遂げてきたことを世界で再現し、より多くの国で展開していくことです。

Rakuten Asiaは楽天の世界展開において、さらに重要かつ大きな役割を担うことになるでしょう。

当社はアジア地域にさらに投資をすることを5年前に決定しました。アジア地域への最初の投資として、2008年、台湾に参入しました。続いて翌年タイへ、2011年にはインドネシア、2012年にはマレーシアに参入しました。これまでの成功と現在の市場のチャンスを生かして楽天は今後数年間、さらにアジアに集中して投資を増やしていくことによって地域内のビジネスの成長を加速させていきます。

当社は、アジアのインターネット分野の進化のスピードに後れを取らないよう、さらに競争力を高めることによって、世界一のインターネットサービス企業になるという目標を達成したいと考えています。

スタートアップは楽天のビジネス戦略をどのように活用したらよいでしょうか?

Thomas氏:インターネットが世界的に広がり、社会基盤が世界的に変化しているのを考えると、インターネットは引き続き世界の経済成長のけん引役になります。eコマース市場はスマートフォンやタブレットのユーザの増加とそれに伴う生活スタイルの変化に後押しされて、ますます成長するでしょう。

シンガポールだけで見ると、2012年に新たに起業された会社は5万6778社に上り(Singapore Department of Statistics調べ)、その数は年々増加しています。

良いプロダクトを扱うスタートアップも中にはありますが、そういったスタートアップでもアジア全体や日本での流通、マーケティングに問題を抱えていることもあります。楽天はそういったスタートアップを支援するのに最適です。それは、何百万件にも及ぶお客様とのオンライン取引の経験を共有できるからです。

アジア太平洋地域のスタートアップの環境は今後どうなっていくのでしょうか?

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Sae Min氏:市場の動きが速いことを考えれば、5年後にアジアでスタートアップの環境がどうなっているか、2年後でさえも予想するのが大変難しいです。楽天が重要だと考えているのは、東南アジアを拠点とした高度な技術を持った数々のスタートアップが出てきていることです。

韓国、日本、香港などのより発展した市場を見ると、多くの優秀な起業家たちが、決済やコンテンツ消費・作成の分野で既存の確立された企業や業界に彼らのプロダクトで変革を与えていくことと思います。

例えば韓国では、スマートフォン経由での金融取引に関してサイバーセキュリティの問題がますます重要になっており、プロダクトとサービスのアイデア両方において多くのイノベーションが促進されています。

香港では違った観点からセキュリティ市場を目指しているスタートアップが見受けられます。消費者やユーザのシステムに対する捉え方を根本的に変えるために、様々なインタラクションの方法や価格帯を適用しています。

アジアはこれまでずっと欧米の経済を圧倒してきましたが、今後何年にもわたって圧倒し続け、世界で最も急成長している地域の1つになっていくでしょう。

現在アジアには多くのチャンスがあり、投資するには間違いなく最適な時期です。今こそ起業家や投資家たちをワクワクさせる時代なのです。

どの分野に1000万米ドルの資金を投資されますか?

Sae Min氏:楽天は、当社の考えに同調していただける企業にファミリー企業としてご参加いただきたいと常日頃から考えています。つまり、1000万米ドルの資金は当社の考えに同調していただけるアジアのスタートアップに投入される予定です。そして楽天の強力なeコマースエコシステムにご参加いただき、シナジー効果を生み出していきます。

当社では、優れたチームや優れた技術、優れたリーダーを求めています。情熱を持ち、現状を変えていくという意欲がある人が必要です。また、競争力のある技術を多く持ち現在のビジネス基盤にその技術を柔軟に適応させることのできる企業を求めています。

投資の規模にはこだわりませんし、多くの投資家と一緒に仕事をしたいと思っています。多様性は大歓迎です。個人的には決済インフラや金融サービスの変革、コンテンツ消費・作成プラットフォームなどの縦型サービスに興味があります。

投資自体は始めてからわずか2か月余りでしかありませんので、アジア市場で楽天独自の方法で投資をしていけるよう最大限努力していきます。

【via SGE.io】 @SGEio

【原文】

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