ユーザをパートナーと考え、共に作っていく意識を持つこと−−ウェルセルフ南氏が語る「サービス立ち上げとコミュニティ作りの心得」

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サービス立ち上げには、そこに至るきっかけや思いがある。その思いがどれだけ強いか、どれだけ創業者のストーリーと紐付いているかで、サービスの方向性は決まってくる。

CtoCマーケット「ココナラ」を運営しているウェルセルフCEOの南章行氏は、大学卒業後三井住友銀行に入行。その後企業買収ファンドのアドバンテッジパートナーズを経て、在職中に英国オックスフォード大学経営大学院を修了。2つのNPOを立ち上げた後、パートナーと共にウェルセルフを設立した。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語ったサービス立ち上げとコミュニティの心得についてまとめた。

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2つのNPO立ち上げがきっかけ

ウェルセルフを立ち上げる前、MBAを取得するためにイギリスへ留学した。その際に、音楽やマルチメディアを通じたプログラムを通じて、高校生を中心とした若者の育成支援を目指す国際NPO「ブラストビート」と出会い、日本法人の立ち上げの手伝いをすることになった。その後日本に帰国してNPOのコンサルティングやNPOと支援者のマッチングを行う「二枚目の名刺」というNPO団体も立ち上げた。2つのNPOを通じて、自分のスキルや能力を別の誰かに提供することそのものが、その人自身にとっても自信や成長につながるという経験をし、その経験が今のココナラのアイデアのベースとなった。

個人をエンパワメントする場を作る

もともとヘルスケアビジネスを始めるためにウェルセルフはスタートしたが、その時点で技術やスキルを数百円で交換できるマイクロサービスプラットフォームというアイデアはあったが、ただそれだけでは魅力がないと感じていた。そこに、ある管理栄養士との出会いがあった。食事のプロである栄養士が、病院内だけでなく一般の人達の相談にものってあげたいと考えているがそうした場がないという話をしてくれた。いきなり個人が栄養相談サービスを立ち上げるのは難しく、やるとしてもビジネスとして成り立たせるためには単価が高くならざるをえない。しかし、こうしたちょっとした人の役に立つものは、値段さえ安ければニーズは潜在的に存在する。そして、人の役に立ちたいという思いを持った人はいくらでもいる。栄養相談のような小さなマーケットでも、たくさん集めたらビジネスになるのではないかと考えた。

自分自身の持っているものが活かされることの喜びは、何もNPOに限った話ではない。より多くの個人をエンパワメントすることは、自分たちがやる意義と合致する。マイクロサービスプラットフォームを小遣い稼ぎサイトではなく個人をエンパワメントするサービスだと捉え直した時に、イメージが何倍にも膨れ上がった。ヘルスケアビジネスを志向している時点で「より多くの個人が自分のストーリーを生きるためのサポートをすること」というミッションステートメントを作っていた。このステートメントは、マイクロサービスプラットフォームをやることになっても変わっていない。あらかじめビジョンがチームで共通化されていたからこそ思いついたビジネスプランだった。

スタート前に実施したクイックな調査

アイデアを正式に検討することになり、自分たちが考えたアイデアが実際に有効かどうかアンケートを実施した。友人をツテに2日で70人から回収し、自分たちの目的やコンセプトが受け入れられるかを確認した。ポイントは、なるべくリアルに想像できるように具体的なサービスやイメージ、想定されるやりとりなどを踏まえた資料を作ったことだ。結果、ニッチなものに幅広くニーズがあることが分かり、プラットフォームとしての形が見えた。わずか一週間で固めたコンセプトだったが、その時に作ったペルソナの仮説はオープン後1年以上たった今も何も変わっていない。

また、友人経由で依頼したアンケートは、きちんと分析結果を返すことが大事だ。誠意を持って返すことで、その後もサポーターになっていただけるからだ。

コンセプトのブラッシュアップを図ること

コンセプトを一週間で固め、次は本当に価値があるサービスかを実証した。無料の掲示板を活用してココナラのMVPとなるやりとりを実施し、オンラインで知らない人に相談する感覚を試した。また、出品者のリクルーティングとニーズ把握のために資格団体57団体に営業するなど、短い時間ながら営業まわりを展開した。

ユーザインタビューや座談会などを通じ、なぜ人に相談するのかといった本質的なバリューを理解するようにも心がけた。他社の似たサービスをリサーチしてどういった相談がされるのかを市場調査し、最終的なビジネスコンセプトのブラッシュアップをするなど、数週間でこれら多くの過程を踏んでいった。

自分たちで実現可能なビジネスか洗い出す

ビジネスとして成長していくには、投資を受けられるかが一つの指標だ。元VCや起業家を巡り、市場の魅力や立ち上げのタイミング、また、どのような立ち上げ戦略を取るべきかなどの意見をいただいた。

自分たちで実現可能なのかを考えるため、今後直面するイシューを洗い出し、それぞれについて経験者にヒアリングも実施した。どれくらいの工数や人員で開発可能なのか、どの程度顧客対応にリソースが必要なのか、どうやったらサービス提供者を集めることができるのかなど、様々なリストを洗い出し一つ一つ地道に確認した。サービスを始めるまでに、どれだけこうした準備をできるかが、その後の展開に大きく左右する。

量が質を生むからこそ、フットワークを大事にする

ビジョンや本質的なビジネスコンセプトは自分たちで考えなければいけないが、それ以外の答えは自分たちの外にあるものだ。だからこそ、ユーザや投資家、競合や協力者、他社事例など参考にできるものは貪欲に参考にしようと動くことだ。

そのためにはフットワークやスピードが大事だ。量が質を作り上げる。どれだけ足で行動したかが自分たちの糧になる。自分たちが持っているアイデアや知識は大したことはないと考え、積極的に外部から得ようとしたほうが良い。

ベータ版を踏まえて、1からやり直す気概を持つ

ベータ版のプロダクトは、作り途中の公式版、ではない。ベータ版の目的は、実際のユーザを通して仮説検証をすることだ。どんな仮説を検証したいのか、どうやったら検証されたと判断できるのかなどの基準をあらかじめ設定しなければいけない。なんとなくベータ版を出し、それをそのまま公式版に引き継いでいく、というものではない。

ベータ版の段階では、サービスに対する理解は2割程度しかないと考え、全速力で仮説検証を繰り返すことが重要だ。中途半端な改善をしても仕方ないので、あらかじめ検証結果をもとに全部作りなおすつもりでいたほうがいい。実際ココナラはベータ版を捨て、1ヶ月でほぼ全て作り直してリリースをした。

サービスの語り部を初めに作る

ココナラは、誰でも参加できるマーケットプレイスだ。モノと違ってクオリティが事前に分からない「サービス」を売買しているため、マーケットプレイスの空気感が肝心だ。そのため、良い出品者を事前に集めコミュニティ感を醸成した。良いコミュニティには良い人が集まるし、その逆も然り。公式ローンチ時のサイトの雰囲気が最も重要と考え、ベータ版の段階で友人を中心に1000人に1通1通メッセージを送って口説き、そのうち400人が登録し、200人が出品してくれた。

さらに、ローンチ前からユーザイベントなどを通じてサービスの語り部となる人を作った。ベータ版の参加者を中心に、サービスの話だけではなく自分たちのビジョン、さらには内部資料なども多く公開し、その上でココナラが広がった世の中はどうなるのかを一緒に考えるワークショップを開催するなどした。それによって、イベント参加者はそれぞれにココナラを自分ごと化し、ローンチ日には各々の言葉でココナラを宣伝してくれる存在となった。

ユーザをパートナーと考え、共に作っていく意識を持つ

ココナラは、目に見えないものを売るマーケットプレイスだ。だからこそ、出品者のモチベーションやサービス全体のコミュニティ感をどう作り上げるかを重視している。出品者向けには常に丁寧な情報開示と迅速なフィードバックなど、出品者をココナラの一人のパートナーとして認めて情報を届けた。時には出品者限定のメッセージの送付やイベントなどを開き、出品者との関係性を築いていくよう努力している。

オンラインのサービスだからこそ、オフラインのコミュニティを作ることはとても大切だ。共感をもとに獲得したユーザは質が高く、そうしたユーザが醸成する空気感がサイトの質の維持に大きく貢献する。現在では63000人以上ものユーザが集い、累積で41000件以上の成立取引数にまで伸びるサービスとなった。

自身の思いをもとに共感をどう得るか

ベンチャーは、基本的にリソースがない存在だ。しかし大企業と違うのは創業メンバー自らが顔を出し、思いを発信できることが強みだ。現代はモノやサービスだけを消費する時代ではない。それらの背景にある人の思いや共感を表現してこそ、新しいマーケットを作っていくことができる。創業者の思いを乗せたり、ユーザのストーリーや背景が見えやすいプロダクトを新しく作ったりできることが、ベンチャーらしい戦い方だと思っている。

共感を得るためには、サービスを形づくるすべての要素が一貫したストーリーのように調和することだ。人とモノを合わせたものが、最終的なプロダクトだと考えてもらいたい。プロダクトの要素一つひとつが自分たちのビジョンと関連があるかはもちろん、運営者側が採用時やユーザと接する時にどう振る舞うかなど、自分たちの言動一つ一つが関係し、サービスと連動していることを意識してもらいたい。

考えたアイデア自体には価値はなく、誰がどこまでやりきるかが重要だ。起業家は24時間誰よりもプロダクトのことを考えているのだから、アイデアをオープンにしたところで誰もその起業家には勝てない。アイデアや思いをオープンにして、全速力で形にすることだ。

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