年中無休診療クリニックの多拠点運営を支援するCAPS、500 Startups Japanからシード資金を調達

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前列左から:金谷義久氏(取締役最高執行責任者)、白岡亮平氏(医師、最高医療責任者)、鶴谷武親氏(代表取締役)
後列左から:澤山陽平氏(500 Startups Japan マネージングパートナー)、James Riney 氏(500 Startups Japan マネージングパートナー)、吉澤美弥子氏(500 Startups Japan シニアアソシエイト)
Image credit: CAPS

東京に拠点を置く CAPS は19日、シードラウンドで 500 Startups Japan から資金調達を実施したことを発表した。調達金額は開示されていないが、関係者の情報を集約すると、数千万円台の後半とみられる。

CAPS は、地域に根ざしたかかりつけ医療機関(同社ではプライマリケアクリニックと呼んでいる)の多店舗運営を支援するスタートアップだ。法律の制約からクリニックの運営は医療法人が担っているが、CAPS はクリニックの運営に関わる事務作業を効率化することで、代官山、西葛西、北葛西、亀有、紀尾井町、柏の葉の、首都圏6拠点で365日営業のクリニック運営を支援している(リンク先 web サイトは医療法人の開設によるもの)。

POS レジに代表されるデジタルソリューションが導入されることで、コンビニエンスストアの24時間営業が可能になった。我々は医療の世界に電子カルテを取り込み、業務を効率化することでクリニックの365日営業・多拠点運営を可能にしていく。

そのための一つの仕組みとしているのが事前問診。患者は来診前に家で、またはクリニックの待合室でタブレット入力すると、その内容が電子カルテに自動的に反映される。医師や看護師は転記する必要がなく業務の効率化が図られ、結果的に時間あたりで診られる患者の人数は多くなる(CAPS 最高医療責任者 白岡亮平氏

CAPS が運営支援するクリニックは、病床を持たず往診は積極的に行わないものの、内科や小児科診療などを提供できる「町医者の現代版」と言えるだろう。原則として365日営業で、拠点にもよるが朝9時から夜9時まで営業しているところが多い。これまで、休日や夜間に医療を受けるには、救急外来や自治体などの運営する急病診療所に頼らざるを得なかったことを考えると、これらのクリニックが社会にもたらすインパクトは小さくない。

医師や看護師は医療法人によって雇用される必要があるが、会計・カルテ管理・レセプト(診療報酬請求明細書)を作成する医療クラーク(医師事務作業補助者)はこの限りではない。デジタルの仕組みと、複数拠点の業務の集約により、CAPS は医療事務の効率化を図っている。クリニックの多拠点展開においても CAPS が経営分析、拠点開発、医療機器の確保を行い、各拠点の運営を医療法人に委ねる体制をとっている。

キャップスクリニック代官山 T-SITE
Image credit: 代官山 T-SITE

ところで、365日営業をする上で最も気になるのは、ただでさえ不足していると言われる医師や看護師をどのように確保しているかだ。一定規模以上の病院では勤務医は医局が中心となって募集されることが多いし、市中の開業医は出身大学や医師会のつながりなどからバックアップしてくれる医師を探してくることが多いだろう。

CAPS が運営支援するクリニックの場合、複数拠点を展開していることから医師の勤務体系に柔軟性が生まれるようだ。各種メディアでの情報発信を通じて、これまで無かったサービスモデルに関心を抱く医療関係者も多く、口コミで応募が来るケースも多いとのこと。代表取締役社長の鶴谷武親氏は既存の医療機関との違いとして、「常勤医師と非常勤医師の割合が、勤務時間ベースで半々くらいになっているのは特徴的かもしれない」と語った。業務効率化が功を奏し、診察業務以外に時間を取られないことも、医師の働くモチベーションを上げているようだ。

現在の日本ではプライマリケアにシフトが起きていて、一方でそれをしっかりと担えるクリニックチェーンが存在しないので、それを確立していきたい。CAPS だけでなく、他にもやりたいというプレーヤーが現れ、市場全体が活性化するのが楽しみだ。

クリニックの365日運営はなかなか難しいサービスだが、それを実現できるノウハウとパッケージを持っているところが CAPS の最大の強み。

CAPS では今後、システムや体制の充実を図り、2年後にはクリニックを15拠点、2030年には全国に150拠点を展開したいとしている。500 Startups Japan からの今回の調達は、資金的な需要よりむしろ、同 VC が持つネットワークを通じた事業開発の可能性拡大に期待したもの、とのことだった。

規制緩和の影響もあり、最近では医療の世界にも面白いスタートアップが生まれつつある。〝QB ハウスの歯医者版〟の異名を持つ、10分1000円の予防歯科診療を提供する Hakara は、先ごろ開催された Tokyo Startup Gateway 第5期のデモデイで優秀賞を獲得している。

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