ピックアップ: Carbon Health pulls in $30M to become the ‘Starbucks of healthcare’
ニュースサマリ:2019年6月5日、米国サンフランシスコ拠点のヘルスケア企業「Carbon Health」が3,000万ドルの資金調達を発表した。創業は2015年、現在シリーズBラウンドで累計調達額は3,650万ドルに及ぶ。
同社は医師への診察予約から処方箋の配達サービス、ラボテストや過去のカルテデータ管理までをアプリ上で一括で行えるサービスを提供。
ユーザーはあらゆる医療サービスをひとつのプラットフォーム上で予約できる利便性を手にする。医療サービス提供者側は診察/診療後のフォローアップを適切に行うための患者との接点、カルテデータへのアクセス権を手にする。
患者を取り巻くあらゆるステークホルダーからの情報を連携させた患者データを提供するOne-Stop-Platformとして活躍する。
話題のポイント: Carbon Healthが目指すゴールは、スターバックス並みに高い信頼とブランド性を持った、手軽に利用できる病院を世界中に設置することです。
このビジョンを満たすために必要となるコンセプトが「仮想ホスピタル」。そしてコンセプトを実現させる戦略がメディア化だと筆者は考えます。
元々は独立したデータ管理システムを持つ各医療機関を繋ぐための電子カルテ及びオンライン注文システムを開発するアイデアから始まったCarbon Health。
自社でコンテンツを作るのではなく、既存プレイヤーを連携させることで価値創出し、コスト削減に繋げる戦略が根幹にあるわけです。従来型の自社旗艦病院を置き、あらゆる医療コンテンツを自社で手配する拡大戦略とは明らかに異なるものと言えるでしょう。
最大のメリットは病院を建てるための不動産や施設運営コストを一切無くし、システムのオペレーション開発にのみ特化することで収益化できる点。
ローカル病院や薬局、血液/DNA検査可能なラボとの提携ネットワーク数を増やし、顧客に最寄りの医療機関を紹介する送客手数料を通じて収益化する事業モデル。
実際に病院を建てるのではなく、医療サービスをマージすることで従来の病院に匹敵するサービスを立ち上げるのです。本記事ではこの業態を指して「仮想ホスピタル」と呼びます。
「仮想ホスピタル」を確立するための戦略は、日本のGunosyやNewsPicksに代表されるキュレーションメディアの手法と似ています。
外部パートナーからコンテンツを仕入れつつも、自社ブランドプラットフォーム上でコンテンツを届ける。成長角度を最大限に高めるため、コンテンツ創出を諦め、プラットフォーマーとして顧客獲得していくことに終始したビジネスモデルです。
顧客には医師への診療予約から処方箋の配達、ラボテストまでを一元予約できるストレスフリーな体験価値を提供。提携サービス側には顧客予約システムと電子カルテ情報を提供。診察後のフォローアップに繋がるシステムを卸します。
先述したように裏側では外部パートナーがサービスプロバイダーになっていますが、Carbon Healthのブランド名の下システムが回っているため、よりよいコンテンツを提供できれば自然とブランド価値が上昇する巧みな手法と言えます。
医療施設のバーチャル化とも言える「仮想ホスピタル」の概念。ローカルレストランに配達予約注文システムを卸しネットワーク構築したUberEatsにも同様の考えが適用できるでしょう。どれも「ソフトウェアが世界中を食い尽くす」というSaaS社会到来に伴う各市場の変革に紐づきます。
さて、メディア化の話に戻すとこれから医療サービスが生き残る道は二つ挙げられるでしょう。プラットフォームかコンテンツプロバイダーかのどちらかです。
プラットフォームはここまで説明してきたCarbon Healthのように散り散りになっている医療サービスを統括する立ち位置。一方、コンテンツプロバイダーは医療機関や薬局、ラボなどの特化型のサービスを提供するプレイヤーを指します。
メディア市場で例えると、プラットフォームの市場ポジションを取るNewsPicksと、スタートアップ情報に特化した本メディアThe Bridgeの構図に全く同じことが言えます。
日本では法律の壁もあり、なかなか医療サービスを一元統合できる環境にない印象にありますが、デジタル時代には当たり前のトレンドであるため、いづれはやってくる考えなはずです。いまから注目していて損はないでしょう。
Image Credit: Presidencia de la Repúblic
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