本稿は、7月10〜12日に開催される、Infinity Ventures Summit 2019 Summer in 神戸の取材の一部。
12日午前、IVS では恒例となっているスタートアップ・ピッチコンペティション「LaunchPad」が実施され、個人向け社債の代替を目指す、貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」運営のクラウドーポートが優勝を獲得した。
LaunchPad の審査員を務めたのは、
- 赤坂優氏 エリオット 代表取締役
- 朝倉祐介氏 シニフィアン 共同代表
- 川田尚吾氏 DeNA 共同創業者
- 木下慶彦氏 Skyland Ventures パートナー
- 近藤裕文氏 サイバーエージェント・キャピタル 代表取締役 CEO
- 真田哲弥氏 KLab 代表取締役社長 CEO
- 塩田元規氏 アカツキ 代表取締役 CEO
- 千葉功太郎氏 Drone Fund 代表パートナー/個人投資家
- 仲暁子氏 ウォンテッドリー 代表取締役 CEO
- 丸尾浩一氏 大和証券 専務取締役
- 溝口勇児氏 FiNC Technology 代表取締役
- 吉田浩一郎氏 クラウドワークス 創業者 社長 兼 CEO
- 佐藤裕介氏 hey 代表取締役社長
なお、副賞としてファイナリスト全チームに Freee の1年分利用権(Freee 提供)と aws activate $3,000クーポン(Amazone Web Service 提供)、また優勝チームに 200 万円相当の Freee 利用権(Freee 提供)、TECHPLAY PR サポートプラン半年分(TECHPLAY 提供)、SibaZiba 6ヶ月メンバー会員権 + コワーキングスペース4席利用権(SibaZiba 提供)、本当にかなう Amazon Wishlist (Amazone Web Service 提供)、日本から海外・海外から日本進出した際のキャッシュレス費用相当分の無償提供(Nippon Platform 提供)、FavoSquare から Aiptek MobileCinema i70 プロジェクター + Lifeprint スマホプリンタ(NTT ドコモベンチャーズ提供)、ビラージュ伊豆高原無料宿泊券(住友不動産提供)、東京ディズニーランドでのスペシャルディナー & 1 Day Passport 4名分(大和証券提供)が贈られた。
登壇したのは以下の14社。
【優勝】Funds(ファンズ) by クラウドポート
社債は、企業にとって株式による資金調達よりもコストが安く使途についても柔軟であり、個人投資家にとっては株式相場に左右されず元本割れリスクが少ないなどのメリットがある。しかし、アメリカなどの企業と比べ、日本企業が社債を活用できている事例は著しく低い。これは、日本では上場企業の中でも投資適格の各付けを持つ企業が1割に満たない中、証券会社が投資適格も各付けを持たない企業の社債取扱について限定的であるなどの理由による。
Funds は、個人向け車載を代替するサービスだ。社債ではないが、社債に近い機能を提供でき、資産形成したい個人と資金調達したい企業をマッチングする。 株式市場と債券市場の間に空いているニッチエリアを攻めることで、株式ほどはリスクを取りたくないが、債券よりは高リターンを好む投資家に3%前後の固定利回りを提供する。これまでに約1万名が Funds で投資しており、運用残高は6.7億円までに成長。2026年までに運用残高1兆円の達成を目指す。
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【2位】DeepLiquid by AnyTech
個体や気体に比べ、液体は一部が汚染されると、その部分だけでなく丸ごと廃棄されることが多い。周囲への影響・波及がしやすいためだ。水処理施設などでは、水が汚染されたことを検出するために多くの化学センサーが設置されているが、化学センサーの整備には時間とコストがかかり、また精度も不安定であることから、目視のために監視員が巡回しているのが現状。一方でこの監視員は求人難やコストの問題から常に不足している。
AnyTech が開発した DeepLiquid は、流体力学を応用した Liquid Texture Mining により、液体の揺らぎの変化から異常状態を検出。ユースケースとしては、水処理施設における微生物処理過程の不具合検出、製鉄溶解時のノロとり(不純物除去)課程の効率化、唐揚げの揚げ上がりタイミングの見極めなどさまざま。単一のアルゴリズムでデータを入れ替えるだけで多分野に応用が可能で、資源、生物、化学分野をターゲットに据えている。カメラ台数に応じた月額料金モデルを採用。リリースから4ヶ月で売上1億円を突破した。
【3位】超高精度がん10種類の尿検査 by Icaria
Icaria は、尿検査によって超高精度で10種類のがんを検出する技術を開発。従来の血中バイオマーカー(腫瘍の DNA 検出)による方法では最大でも40%程度の精度でしか検出できなかったが、Icaria ではがん細胞同士が転移する際に情報伝達に使っているとみられる膜小胞「エクソソーム」に着目し、少量の尿から独自開発したデバイスによってエクソソームや miRNA(マイクロ RNA)の網羅的解析に成功。応用範囲は多岐にわたるが、肺がんや腫瘍の検出ではステージ1でも98%の精度で検出できるという。
来年、1〜2種類のがんを対象に着手し、提携病院から患者の尿を提出してもらうと、Icaria のラボで解析し1週間程度で結果を回答できる体制を整える。AI を使ったがん種類を識別する方法も発展させ、将来は、最適な治療方針の選択を提案もできるようにする考え。製薬大手 Johnson & Johnson がサンディエゴで運営するオープンイノベーションのためのウエットラボ「JLABS」への入居が決定している。今後、日米で1万件以上の臨床試験実施を目指す。
【4位】ロジクラ by ニューレボ
ニューレボの「ロジクラ」は、54兆円に上る中小企業の過剰在庫の問題の解決を支援するプラットフォームだ。企業における発注担当者は、勘や経験で発注を行なっていることが多く、これが過剰在庫を生み出している。ロジクラでは、景気動向、天気、競合情報、破損率などをもとに需要予測を行い、データドリブンな発注環境を提供する。
ローンチから8ヶ月でユーザは5,000社を突破、1000億円相当の在庫データを蓄積している。今後、ユーザ同士が過剰在庫/在庫不足を売買できるマーケットプレイス機能「ロジクラ Marketplace」、在庫を担保にした動産担保融資機能、需要予測モデルを活用したビジネスを展開する計画。ロジクラ Marketplace は2020年1月のリリースを目指す。
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【5位】Dr. 経費精算ペーパーレス by BearTail
経費精算 SaaS の「Dr. 経費精算」に、レシートの突合処理とレシートの保管サービスからなる BPO を組み合わせたのが「Dr. 経費精算ペーパーレス」だ。 SaaS としての機能は無料で提供され、BPO サービスは月額7万円で提供される。ユーザは経費のレシートをスマートフォンで撮影した後、オフィスに設置されたボックスに投入するのみ。レシートは各オフィスから回収され、BearTail に2,000人いるリモートワーカーにより投入データとの突合がなされ、法で定められた7年間にわたり倉庫で保存される。
今月には出張手配を依頼できる「Dr. Travel」をβローンチ。このサービスを利用すれば、出張費用についてはデータ登録を必要とせず、自動的に Dr. 経費精算に取り込まれる。ローンチから1週間で8,000件が利用されたという。今後、Dr. Travel → Dr. 経費精算のデータ取込を自動連携にし、外務省が提供している「たびレジ」とも連携して、安全危機管理情報の提供も可能にするとしている。
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入賞しなかったものの、予選を通過し決勝に登壇した残り9社は次の通り。
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なお、この日、次回の Infinity Ventures Summit 2019 Winter がバンコクで開催されることも明らかになった。12月2日〜4日の3日間、バンコク市内中心部で開催される予定だ。
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