三菱東京UFJ銀行がMUFG FinTechアクセラレータの第1期デモデイを開催——参加5チームはMUFG金融サービス各社と協業を開始

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2016.8.7

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三菱東京UFJ銀行は4日、都内で MUFG FinTech アクセラレータのデモデイを開催した。同行はこれまでに、スタートアップ・コミュニティとの関わりとして、FinTech Challenge や同プログラムのハッカソンを開催してきたが、アクセラレータプログラムを運用するのは初の試みとなる。

2016年末から2017年1月にかけて参加チームが募集され、選考を経て5チームがプログラムに参加。彼らは2016年4月からの4ヶ月間、FINOLAB が入居しているのと同じ東京銀行協会ビルに開設された MUFG FinTech アクセラレータのワーキングスペース「Garage」に腰を据え、担当メンターらの指導を受けながら、サービスの改善やブラッシュアップに努めてきた。

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デモデイでは、彼らの4ヶ月間の成果が、MUFG グループ各社担当者、ベンチャーキャピタル、メディアなどに初めて披露され、審査員により上位評価が得られたチームには、事業奨励金などの副賞が与えられた。

デモデイでの審査員を務めたのは、

  • TXアントレプレナーパートナーズ 最高顧問 村井勝(むらい・まさる)氏
  • 森・濱田松本法律事務所 パートナー 堀天子(ほり・たかね)氏
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 常務執行役員 亀澤宏規(かめざわ・ひろのり)氏
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 取締役専務執行役員 鷲見英二(すみ・えいじ)氏
  • 三菱UFJキャピタル 代表取締役社長 半田宗樹(はんだ・むねき)氏

…以上の方々。また、今回参加した全スタートアップ5社に、PR Times 賞(副賞:2016年8月〜2017年7月まで、プレスリリース配信サービス「PR Times」を一定回数無償で利用できる権利)が授与された。

【グランプリ】xenodata lab.(ゼノデータ・ラボ)

  • 担当メンター:グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野 穣氏
  • 副賞:事業奨励金 200万円

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日本における株式市場上場銘柄3,600社のうち、個人投資家が投資判断の参考にできる決算分析レポートが出されているのは、全銘柄の14%に相当する500社だけに過ぎない。つまり、個人投資家が投資対象とする中小型株の大部分の銘柄には決算分析レポートが発行されておらず、これらの銘柄については、投資家は決算短信、適時開示資料、決算説明会資料を収集し、自力で分析しなけれはならない。

xenodata が開発した ゼノ・フラッシュは、XBRL解析、PDF表解析、PDFグラフ解析により、各種決算関連資料に書かれた情報を表データに変換、独自アルゴリズムにより表データの中から重要な決算のポイントを特定し、さらに自然言語処理により、資料中の厖大な文章データから、特定あれた数値の背景を抽出する。資料の収集から情報解析まで、一銘柄あたり1分以内で完了する。

バリュープロポジションは、あらゆる企業について決算発表後に情報がすぐ届くこと、重要な部分のみが提示されること、インフォグラフィックにより情報が見やすいこと。2016年中に、カブドットコム証券でサービスをリリース予定だ。将来的には、リテール系証券会社を通じた個人投資家への情報提供(B2B2C)に加え、ニュースメディアへの情報配信、海外銘柄への対象拡大、アナリストがいるホールセール証券会社への B2B でのサービス展開の可能性も模索する。

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【準グランプリ】Alpaca DB(アルパカ)

  • 担当メンター:アーキタイプ 中嶋 淳氏
  • 副賞:事業奨励金 100万円

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これまでに、トレーディング・プラットフォーム「Capitalico」を開発してきた Alpaca だが、今回のアクセラレータへの参加中には、アメリカの上場株式7,000銘柄を常時監視、市場データの特化した人工知能技術で、さまざまなデータと株価変動の関係をリアルタイムで解析する「Alpaca Scan」を開発した。過去の値動きデータやニュースに基づき、どの銘柄をどの程度持ったら、将来的にどれくらい上がる可能性があるのか、売買する契機が何なのかをユーザが理解するのを支援する。

また、同社は、Capitalico や Alpaca Scan のバックエンド・インフラとして、金融の時系列データに特化した自社開発のデータベース「MarketStore」を開発。Oracle や Kx と比べ、遥かにコストパフォーマンスが高く、費用面でも運用に必要な RAM 容量の面でも100分の1程度のリソースで稼働させることに成功した。Capitalico においても、今年3月には30分程度かかっていたアルゴリズム解析が、現在では10秒程度にまで劇的に時間短縮され、同プラットフォーム上では、これまでに7,000個の〝モデル〟が生成されたとのこと。

今後は、MarketStore や Alpaca AI Engine をベースにして、三菱東京UFJ銀行と KDDI が共同出資する「じぶん銀行」向けには、ユーザが最適なタイミングで外貨積立ができる人工知能を活用したサービス、カブドットコム証券向けには、人工知能を使ったトレーディングツールを共同開発する予定だ。

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【AWS 賞】スマートアイデア

  • 担当メンター:Draper Nexus Venture Partners 倉林 陽氏
  • 副賞:Amazon Fire Tablet、Amazon 非売品グッズ

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スマートアイデアでは、これまでに2秒でつけられる家計簿アプリ「おカネレコ」を開発しているが、同アプリは2012年8月のローンチからの4年間で350万件のダウンロード数を獲得している。日本に住むスマートフォンユーザのうち、20〜30代の女性の10%は「おカネレコ」のユーザなのだという。スマートアイデアが持つ幅広い女性ユーザ層に対して、金融機関が活用できるサービスはどのようなものだろうか。

リテール金融においては、消費者のライフイベントに応じて資金需要が発生することから、金融機関はライフイベントに応じて想定顧客にアプローチすることを期待するが、情報が無かったり、アプローチする手段が無かったりするため難しい。一方、スマートアイデアが強みとする20〜30代の女性は、「お金がたまらない」とか「お金のことはよくわからず、誰にも相談できない」とかいった悩みを持っていることが、ヒアリングを通じてわかった。

スマートアイデアは、FinTech + Entertainment から Fintainment というコンセプトを提起し、「おカネNavi」と「チャットボットアプリ」の2つのアプリを開発した。「おカネNavi」は、20代女性の7割、30代女性の5割が夢中になっている恋愛シミュレーションゲームに、金融サービスにまつわるクイズを取り入れたものだ。ユーザはリワードを得るために設問を解いていくが、5問解くごとに動画を閲覧しないと次に進めないようになっている。チャットボットアプリでは、人工知能がユーザに質問し、ユーザはそれに答えていくことで最適な金融サービスの提案を受けることができる。

今後、スマートアイデアでは20代や30代の女性向けに、三菱UFJ信託銀行と共同でライフプランセミナーを開催するとのこと。「おカネレコ」のユーザを、「おカネNavi」や「チャットボットアプリ」に誘導するなどして、現在の「おカネレコ」のユーザ350万人(ダウンロード数ベース)を、サービス全体で1,000万人規模にまで成長させたいとした。

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Zerobillbank(ゼロビルバンク)

  • 担当メンター:Genuine Startups 伊藤 健吾氏

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サムライインキュベートの出資を受け、イスラエルで昨年起業した Zerobillbank は、ブロックチェーンベースのオリジナル仮想通貨を発行できるしくみ「ZEROBILL コア」と、位置・時間・センサーからの情報に基づいて発行されたコインを受け取れるアプリ「Z-WALLET」を開発中だ。

Zerobillbak のピッチでは、今回のデモデイが開催された丸の内にちなみ、丸の内にいる Z-WALLET を持つユーザに「丸の内コイン」を発行・付与するデモが披露された。ジオフェンスの概念で、ある拠点から一定距離内にいるユーザに対し、コインを発行する設定が可能。Z-WALLET はセンサー(ビーコン)にも対応するため、ある場所を訪れたユーザや、一定の歩数を歩いたユーザに対してのみコインを付与する、といった条件も設定できるそうだ。

協業を想定される事例としては、生命保険会社と組んで、加入者の歩数や運動量に応じた生保コインを発行したり、健康増進型保険の開発につなげたり、損害保険会社と組んで、車両の挙動やテレマティクスデータと連動した自動車保険コインなどの発行したりするなど。

今後、三菱東京UFJ銀行では行内のリワードのしくみのテスト運用、カブドットコム証券で外部向けサイトのポイントシステムへの導入が予定されており、三菱UFJニコスとは同社の提携先パートナー各社とのリワード開発に活用できないかを模索する。

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ナレッジコミュニケーション

  • 担当メンター:インクルージョン・ジャパン 吉沢 康弘氏

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ナレッジコミュニケーションは今年3月、人工知能やディープラーニングなどを簡単に利用できるクラウドサービス「ナレコムAI」をローンチ。「ナレコムAI」では、機械学習のアルゴリズム選定を従来の4分の1である2週間に短縮し、従来データサイエンティストが必要だったアルゴリズム選定で、アルゴリズムとパラメータの総当たりにより選定プロセスの自動化を実現している。今回のアクセラレータ参加を通じて、同社は「ナレコムAI」を銀行業務に活用できないかと考え、一般的には、データサイエンティストを要し、最低でも2ヶ月以上数千万円はかかるデータマイニングとモデル化のプロセスを、1日以内50万円以下の時間とコストで使えるサービスを作ることを目標に定めた。

ナレッジコミュニケーションでは、2万件の中小企業の決算書と、それら各社に対して、三菱東京UFJ銀行の融資担当者が優良融資先かどうかを判断した情報をもとに、この判断プロセスをモデル化。こうしてできた昨年のモデルに今年の中小企業の決算書を入れてみたところ、4,000社程度の融資判断の参考情報を、30分程度で作成することに成功したそうだ。これまで、融資担当者が、対象企業の自己資本比率などの数値に加え、経験や勘で判断してきたプロセスが、昨年まで実際に運用してきた条件に基づいて、判断プロセスの一部を半自動化できたのは大きい。

今後は、銀行における融資業務のストレステスト、特定サービスの契約者と同じ特徴を持つ新規サービスへの見込顧客の抽出、資金需要がありそうな貸出先候補のリスト抽出などに利用できるのではないか、としている。

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MUFG FinTech アクセラレータがどのような KPI で運用されているかは定かではないが、MUFG 傘下企業との協業プロジェクトの数が重要な評価基準の一つになっていることは容易に推測できる。一部の協業においては、プログラム卒業直後からレベニューシェアや売上が立つものも含まれているようだ。スタートアップにとっては、事業会社系のアクセラレータに参加する醍醐味の一つと言っても過言ではないだろう。

MUFG FinTech アクセラレータは三菱東京UFJ銀行にとっては初の試みであるため、今後の予定については当初未定だったが、デモデイの閉幕にあたり、アクセラレータを統括する柏木英一氏(三菱東京UFJ銀行 デジタルイノベーション推進部長)は、第1期の結果にかんがみ、今秋から年内にも第2期の募集を始めたいとの意向を示した。

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