2012年のシリコンバレーを振り返って─Brandon Hillに聞いた、アジア・スタートアップの攻勢とJapan Nightにかける思い

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【訂正】

  • 当初の記述で SF New Tech Japan Night としたが、今回のイベントから「SF Japan Night」に改称。(第1回~第4回は、SF New Tech Japan Night)
  • ファイナリストの旅費のクラウドファンディング先として Campfire を記したが、正しくは Kickstarter を予定しているとのこと。

以上、2点を訂正しました。(12月25日)


2012年も残すあと10日。今年も世界中の多くの起業家や、スタートアップ界隈の人々に会えたことに感謝している。

テック・スタートアップのメッカ、San Francisco Bay Area の2012年は、どのようにまとめることができるだろう?

San Francisco でデジタル・メディア・コンサルタンシー btrax を営む Brandon Hill 氏に、今年の SF Bay Area のテックシーンの動向を総括してもらった。

今年のベイエリアのスタートアップ・シーンをまとめると…

以前は San Jose、Palo Alto、Mountain View など、Silicon Valley に居たスタートアップが、続々と San Francisco に移動してきている。有名どころでは、GitHubAirBnB もそうだし、500StartupsY-Combinator などのアクセラレータを卒業したスタートアップもその傾向にある。

日本出身のスタートアップで言えば、Open Network Lab が輩出した Anyperk も San Francisco に移転してきて、ちょうど、btrax と同じビルに入居しているようだ。

理由は、少々家賃が高くてオフィスが手狭でも、スタートアップが少人数なので十分なのと、San Francisco 市内の方がいろいろな人に会うのに便利だから。

それから、アジア勢の攻勢がパンパではない。韓国系のスタートアップを中心に扱うインキュベータKofounder Labsのイベントでは、7チームのスタートアップ、20名の起業家が参加していた。先日、中国系のスタートアップを扱うインキュベータ InnoSpring と共催した、Chinese Innovators(創新中国)というイベントでも、30社くらいの企業が参加してくれた。

アメリカでは、日本のスタートアップに人気は無いのだろうか?

アメリカの企業は、日本のスタートアップに対して興味を失っていると思う。彼らの目に見えているのは、その市場の大きさゆえ、中国のスタートアップだろう。ただ、彼らにも、海外(中国国外)で成功したようなロールモデルが少ない。「俺たちにもスタートアップできる」って思いにくいから、優秀な若い人たちは、大手のコンサルティング・ファームなど、大企業に就職してしまい、まだまだスタートアップ・シーンには人材が少ないという問題に直面しているようだ。

では、日本のスタートアップを支援するような動きは無いの?

日本政府の関係省庁などにも支援をお願いしてみるのだけど、「民間の活動に、国民の税金は使えない」というのが建前のようだ。地方自治体で言えば、唯一、福岡県だけが Sunnyvale (Plug & Play Tech Center) に事務所を設置していて、福岡県の支援で Fukuoka Ruby Nights などのイベントが開催されている。日本のスタートアップを Silicon Valley で応援する大きなイベントは皆無なので、そういうこともあって、SF Japan Night を開催している。今回で5回目だ。

SF Japan Night について、教えてください

SF Japan Night は、日本のスタートアップに Silicon Valley で露出する機会をつくろうと、2010年にスタートさせたイベントだ。まずは日本で、海外進出に興味のあるスタートアップにピッチ予選に参加してもらい、そこからファイナリスト6社を決定する。6社には、3月5日(予定)に San Francisco で開催される本選イベントに来てもらい、当地のメディア、投資家、起業家の前でピッチをしてもらう予定だ。

前回の第4回 Japan Night では、プラスアド社の PiaScore が優勝し(関連記事、10月のComingSooners イベントにも参加してくれた)、それ以前の優勝者では、Japan Night への参加を機に、Beatrobo がVCから61.3万ドル(関連記事)、Gengo500startupsAtomicoから5億円(関連記事)、SyncloguemidokuraGrow! などが海外展開への切符を手にしている。前回は、有名経済紙 Forbes にも取り上げられた。予選出場の申込締切は、今年の大みそかまでだ。ぜひこの機会に奮って参加してほしい。なお出場はスタートアップに限っておらず、大企業の社内ベンチャー等にも応募してもらって構わない。

初期のスタートアップには、旅費の工面も大変だと思うけど…

SF Japan Night に参加するにあたり、出場するスタートアップには参加料などの費用は申し受けない。ファイナリストに選ばれて、San Francisco まで来てもらう旅費は自腹なのだけど、スポンサー費用から拠出するのも難しく、今回は btrax が  Kickstarter で旅費相当分の費用をクラウドファンディングし、本選出場スタートアップに分配できればと考えている。

SF Japan Night をやっても、btrax は儲からないよね?(笑)

やればやるほどお金は出ていくばかりで、儲かることは無い(笑)。基本的に、SF Japan Night をやっているのは、日本のスタートアップ・コミュニティに対する goodwill のためだ。ただ、btrax も営利企業なので、どこかで利益は上げないといけないと思っている。SF Japan Night にからめて、大企業の社内ベンチャーの人々を数名招き、San Francisco のテック・コミュニティを体験してもらえる、キャンピング・プログラムを検討している。既に、興味を示してくれているクライアントもいるよ。この話は、書いてもらっても構いません。(笑)


先月あたりから何度か書いているが、 KOCCA(韓国コンテンツ振興院)KISA(韓国インターネット振興院)などのプロモートにより、世界各国で韓国スタートアップの隆盛が勢いを増している。韓流、K-Pop ならぬ、K-Startup の攻勢という言葉が似合うかもしれない。米国西海岸はもともと中華系人種が多いこともあり、中国や他の中華圏のスタートアップとの交流が活発化するのも自然なことだ。

あまりナショナリズムを持ち込むことは本意ではないけれど、海外で日本のスタートアップが活躍することは素直に嬉しいことだし、日本のスタートアップのプレゼンスが弱まることは寂しいことだ。この機会に、あなたが作った素晴らしいプロダクトやサービスを、San Francisco のインターネット・セレブリティに披露してみてはどうだろうか。

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