無料P2P決済アプリを開発するKyash、シリーズAでジャフコ・SMFG・電通DH・伊藤忠・みずほFGなどから10億円超を調達——事前登録を受付開始

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【12月18日8時更新】電通グループからは、電通デジタル・ホールディングスのみの出資で、事業会社としての電通は含まれないことが判明したため、一部記述を削除。

東京を拠点とするスタートアップで、送金・決済システムを開発する Kyash(キャッシュ)は14日、シリーズAラウンドで10億円超を調達したと発表した。このラウンドのリードインベスターは JAFCO(東証:8595)が務め、他に、三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMFG と略す。東証:8316)、伊藤忠商事(以下、伊藤忠と略す。東証:8001)、電通(東証:4324)、電通デジタル・ホールディングス(DDH)、みずほフィナンシャルグループ(東証:8411)が参加した。Kyash にとっては、2015年7月に実施したシードラウンドでの1.7億円の資金調達(調達先のうち1社は三井住友ベンチャーキャピタルで、残りの2社は社名非開示)に続くものだ。

今回の資金調達に加え、調達先のうち SMFG、電通、伊藤忠とは業務提携を伴う。また、三井住友銀行の元副頭取で、アメリカの投資銀行 Greenhill & Co の日本法人 Greenhill Japan 代表取締役の箕浦裕氏が、Kyash の顧問に就任する。

Kyash の設立は2015年1月。これまでほぼステルスで、クレジットカード利用情報のリアルタイムプッシュ通知・履歴閲覧システムを開発する傍ら、個人間送金(C2C 決済)を可能にするモバイルアプリ「Kyash」の開発に傾倒してきた。

Kyash はユーザが持つクレジットカード(以下、クレカと略す)を登録できる電子マネーウォレットで、クレカからウォレットに現金をチャージし、Kyash を持つ他のユーザに送金することができる。他ユーザに未精算の集金を催促することもできるので、飲み会が集中するこの季節には重宝する……と言いたいところだが、残念ながらアプリはまだリリースされておらず、披露されるのは来年1月の予定だ。同社は本日、都内でプロダクトの発表を行い、同時にベータユーザによるテスト運用を開始し、ティザーサイト上での事前登録の受付を開始した。

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「Kyash」が提供する機能やコンセプト(資料提供:Kyash)

さらに Kyash を特徴づけるのは、Kyash 自体が VISA のバーチャルクレジットカードとして機能することだろう。これは Kyash が VISA International と契約しクレカのイシュアとなることで実現しており、ユーザが Kyash のウォレット上にプールしている資金は、世界中の VISA 加盟店での買い物に利用できる。Kyash はバーチャルクレジットカードであるため、対面型決済で CAT(カード与信端末)や Square や Coiney などでスワイプして使うことはできないのだが、プラスティックカードを発行するライセンスも持っているとのことなので、P2P 決済やオンライン決済のみならず、近日中にはオフライン決済のシーンにも侵食してくるだろう。同社は来春以降、Android や Apple Pay への対応も計画している。

一般的に、電子マネーウォレットやクレジットカードの契約には、ユーザが会費などの料金を徴収されるケースが多く、これが運営元の大きな収入源となっている。対して、Kyash の場合は手数料は完全無料だ。これは Kyash がカードイシュアであるため、VISA 経由のトランザクションが発生した場合はイシュアとしての手数料収入が得られること、さらには、ウォレット上には未使用の現金がプールされることなどが寄与している。

(電子マネーのプロバイダがユーザから現金を預かる場合、使われていない現金相当額の50%程度の現金を、信託銀行の口座などに供託金として預けることが金融庁から求められる。これは、電子マネーのプロバイダが仮に経営破綻した場合にも、ユーザに現金が戻されることを担保するための措置だ。供託金部分以外のプール資金を運用すれば、プロバイダはさらなる利益を生み出せる可能性があるが、Kyash はこの点については現時点で言及していない。)

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サービスの全体像(資料提供:Kyash)

Kyash の創業者で代表取締役の鷹取真一氏は、三井住友銀行で海外拠点設立や海外出資案件などを担当、アメリカの戦略系コンサルティングファームで B2C 事業に関わってきた人物だ。鷹取氏の話を聞く限り、Kyash は Paypal が2013年に買収した P2P 決済サービス「Venmo」をベンチマークしているようだ。ただ、Kyash は VISA 加盟店でも利用可能なことから圧倒的に利便性が高く、彼は決済の流れを根本的に変えてしまえる可能性を強調した。先進国の中で、日本のクレジットカード利用率は決して高くないが、Kyash のようなしくみと結びつくことで、カード会社各社は需要の底上げにつながることを期待している。今回の出資者に、大手金融グループ2社が顔を揃えていることは、その期待感の高さの表れだろう。

この分野では、個人投資家で連続起業家の木村新司氏が、C2C 決済を主軸とするモバイルアプリ「paymo」を年内にローンチすることを明らかにしている

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