創業13年目にして初の外部資金注入、ヌーラボがEast Venturesから1億円をシード調達——NYや東南アジアに加え、オランダにも拠点を開設へ

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銀座コリドー街のおでん屋でインタビューに応じてくれた橋本正徳氏
Image credit: Masaru Ikeda

2015年9月に THE BRIDGE とのインタビューで「ヌーラボはスタートアップを卒業し、ゆっくりと成長する(ヌーラボ 代表取締役 橋本正徳氏談)」ことを表明していたヌーラボだが、想定通りに事は運ばなかったようだ。「Backlog」「Cacoo」「Typetalk」という3つの SaaS を世界に提供するヌーラボは、開発受託から脱却し SaaS 事業に集中し始めた2015年頃から急速にユーザ数を伸ばし始め、橋本氏は「スタートアップから卒業せず、留年することになってしまった(笑)」と語ってくれた。

そんなヌーラボだが今日、同社にとって初となる資金調達を実施したことが明らかになった。East Ventures から1億円、調達ラウンドは創業13年目にしてシードラウンドである。営業年数は長いのだが、創業当初は開発受託などを主な生業としており、事業の主軸を SaaS に完全シフトしたのは2013年からだ。橋本氏は、営業年数17年という歴史を持ちながら数年前に SaaS に完全シフトしたチャットワーク(創業時の社名は EC Studio)の事例を引用し、「SaaS に完全シフトした2013年からが、ヌーラボにとってスタートアップとしてのスタート地点」と、マインドセットも人材も若い会社であることを訴えた。

同社が運営するプロジェクト管理・コラボレーションツール「Backlog」は5万社78万人(国内ユーザ中心)、ビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」は約280万人(海外ユーザ比率86.2%)を擁する。2014年2月にはチャットツール「Typetalk」を投入し、ヌーラボのプラットフォームだけでチームワークやリモートワークが完結できる体制を整えた。ヌーラボアカウントという SSO(Single Sign-On)のしくみも導入し、ユーザはアカウント1つで3つのウェブサービスを自由に横断利用できる。

ヌーラボのチーム
Image credit: Nulab

本社のある福岡に加え、東京・ニューヨーク・台湾・シンガポールの拠点を合わせると約80人のチームにまで成長したヌーラボ。そのユーザ数といい社員数といい、キャッシュフローを考えると喫緊の外部資金の需要は高くないようにも思えるが、この段階でのシード資金調達には、海外展開の強化と IPO に向けた準備が背景にあるようだ。海外での投資活動やハンズオンに評価の高い East Ventures を投資家に選んでいることにも、その理由の一端が見て取れる。

これまでのヌーラボの実績を踏まえ、(他社サービスを含む)日本の SaaS を海外に持っていける、一つのトンネルを作れるのではないか。トヨタとかホンダとか、日本のプロジェクトマネージメント手法が海外に輸出され、日本のやり方がマネされるようになったように、ヌーラボを含め、いろいろな SaaS ベンチャーを海外に打ち出していけるスキがあるのではないか、と思っている。(橋本氏)

また、もともと外部からの資金調達に積極的ではなかったヌーラボが IPO を目指す理由として、

企業と事業は違っていて、ヌーラボは企業であり、その下に Backlog、Cacoo、Typetalk という3つの事業(3つのスタートアップ)がぶらさがっている感じ。思いのほか、そのスタートアップたちが成長してきた今、企業基盤をちゃんとしていかないと、スタートアップたちが事業に集中できず、内部からダメになっていくような気がした。(橋本氏)

…と語ってくれた。

ヌーラボは社内の開発者のみならず、ユーザコミュニティのダイバーシティを追求することにも注力していて、社内でも多数の外国人が勤務しているが(事実、橋本氏のアシスタントもカナダ人である)、その一環として、今回オランダのアムステルダムにも拠点を新設することを明らかにした。

日本から世界にサービスを展開するスタートアップはまだ多くないが、SaaS という国境を越えても通用しやすいバーティカルで、福岡スタートアップがめざましい成長を続けていることは頼もしい。ヌーラボの躍進が呼び水となり、地方発スタートアップのグローバル展開に拍車がかかることを願ってやまない。

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