「情報×地頭=意思決定」という方程式がスタートアップを救うーーU25起業家に聞く「5つの起業・新基準」/Upstart Ventures 上杉氏

本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。若手起業家の集まるCxO Night、4月テーマは「イグジット」。参加者の事前登録募集中

スタートアップする起業家なら「未来の当たり前を作る」というフレーズを聞いたことがあるかもしれません。数年後の近未来で日常になっている生活を想像し、そこから逆算してそのサービスを作るという考え方です。

私が起業家を取材しはじめた2010年前後はいくつかのパラダイムシフトが起こっていた時期でした。iPhoneの立ち上がりと共に生まれた「アプリ経済圏」、FacebookやTwitterの拡大による「ソーシャルメディアの拡大」、クラウドインフラの整備による「SaaSモデルの勃興」などがそれです。

当時はどれも市場などなく、多くのビジネスパーソンが「お遊び」程度に思っていたり、気になったとしても飛び込む判断ができない状況だったように思います。この「当たり前の世界」をしっかりと想像できていた人、それが当時のスタートアップたちです。結果はご覧の通り、数千億円の評価を得る企業も生まれています。

あれから10年。

熱狂的にアップデートを繰り返したiPhoneも完成形に近づき、ソーシャルメディアは飽和状態になっています。SaaSビジネスはインダストリーごとに細分化され、ニッチな市場の深掘りが始まりました。

大きなパラダイムシフトが曲がり角を迎える今、次の起業家たちはどの山を目指せばいいのでしょうか。

注目したいのは起業を支えるエコシステムと、それを構成する多くの基準です。

これまでも起業家たちは新しい基準を作ってきました。新しいサービスモデル、新しい体制、新しい企業評価、新しい支援の方法。この基準を知ること、それこそが次のエコシステムを知る鍵に繋がります。

そこでこのインタビューシリーズでは、20代を中心とする若手の起業家を対象に、彼らが生み出そうとしている「新しい起業の基準(スタンダード)」を聞くことで、彼らの経営者としての価値観、未来像、ひいては数年後のスタートアップシーンを想像してみたいと思います。

毎週1名、個人投資家などの推薦を得た20代起業家をインタビューして繋いでいきます。

なお、本企画にあたって「オッサン視点」を出来るだけなくすため、パートナーの協力を得ることにしました。それが今回登場するUpstart Venturesの上杉修平さんです。彼は1998年生まれの現役大学生にして、起業ではなく投資という役割を選んだ珍しい存在です。現在、若手起業家コミュニティ「Freaks.iD」の立ち上げも準備中です。

彼にはインタビュワーとして取材に参加してもらい、同世代の考える新しい基準について一緒に考えていただきます(太字の質問は全て筆者。回答は上杉氏/執筆・編集:平野武士)。

上杉修平さん/投資ファンド「Upstart Ventures」代表パートナー

慶應大学SFCで学ぶ1998年生まれの20歳。2017年にはCandleの新規事業部にてインターン中にメディア事業を立ち上げたり、慶應大学のアクセラレーションプログラム「KBC」の運営に参加するなど、同世代起業家コミュニティづくりに携わる。2018年6月からはSevenwoods Investmentのアソシエイトとしても活動中で、代表を務めるファンドでは500万円から1000万円ほどの金額でシード期の企業に投資を実施している。

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ということで、新連載を一緒に進めることになりました。改めて上杉さんの事業について教えてください

上杉:シードに特化したベンチャーキャピタルファンドを運営しています。ファンドサイズは1億円程度で、各社500万円から1500万円程度を出資します。同世代の起業家・インターン生のネットワークや、Sevenwoods Investmentの米国FoF(ファンズ・オブ・ファンズ)からの情報を活かして投資の意思決定をしています。

ちなみに私は昭和52年生まれで、上杉さんの人生2回分生きてることになります。今後の取材で老害圧が出てきたらすぐに止めてくださいね

上杉:苦笑

ところで上杉さんからみて、同世代でスタートアップしてる方々のきっかけってどういうものがありますか?

上杉:そうですね、あまりMECEではないかもしれませんが、怒りやルサンチマンみたいな動機で起業するタイプと、その他何かしらの憧れや向上心があって起業した層がいそうです。

私たち世代的には起業家は常に社会に不満を持っている、みたいなパターンがあって、取材の時にはそのストーリーを聞くのが鉄板だったんですけどね

上杉:まあ全部がそうとは言い切れないですよ。起業の動機は他にも結構分かれそうだったりするので、原動力はもちろん気になりつつ、その事業で成功すると確信した仮説や、そのための徹底的な情報収集とかの方が個人的に興味があるところではあります。不満以外の動機で起業した人もいると思うので、それぞれ何のために、何を目指して起業するという意思決定をしたのかも気になります。また、成功確度を上げるためにどんなことをしたのか、何を考えているのかも聞きたいですね。

なるほど、確かに定性的な根性論みたいな話題から、仕組み化している印象は多少感じてます。ただこれは別に年齢はあまり関係ないですけどね。エコシステムの成熟の結果かなと

上杉:そうですね、同世代の起業家を知りたいのであれば、もう少し具体的に成長速度を維持し続ける原動力や伸ばし続けて結果を出している理由、事業仮説など解像度上げて聞いて見ても学びが深いと思います。

アドバイスありがとうございます(笑。ところで今回「5 Standards」というテーマで、5つの項目に絞って起業についての考え方を聞こうとしてるんですが、上杉さんがこれから彼らに聞きたい項目はどのようなものがありますか

上杉:エグゼキューションの方法や成長速度についての考え方、事業仮説の精度の上げ方持ち方。後、みなさんが考える結果についてはお聞きしてみたいですね。

ちなみにエグゼキューションの事例で上杉さんが好例と考えるものは

上杉:インターンしていたcandleの事例なんですが金さんがいつもおっしゃっていたのは「情報×地頭=意思決定」という事でした。これは本当にその通りだなと。

いかに地頭が優秀でも狙っている領域や、やろうとしているサービスの情報が全くない、競合がそもそもうまくいっているのかどうかもわからないという場合、博打に陥ってしまう危険性があります。いくら努力しても、施策を打っても方向性が見当違いの場合は、全てが水の泡になってしまうことがあります。

確かにデータが全く集まっていないという状況は怖い

上杉:逆に情報が集まっていてもそれを適切に判断できないと、これも適切な打ち手が出てこなくなってしまいます。うまくいくかどうか、成功するかどうかがそもそも判断できるまで徹底的に泥臭くリサーチをし切れるかどうか、これが起業する際のリサーチにおける重要なポイントと言えるんじゃないでしょうか。

おじさん起業家はこの辺りを経験則でやろうとするから、分かった気になって失敗する例が多そう。では成長についてはどのように考えてますか

上杉:僕が高い成長速度を維持し続けようとするのは焦りからです。人それぞれモチベーションは違うと思いますが、自分は「憧れ」を感じている人が周りにとても多く、本当に恵まれた環境だと思います。一方で彼らを追い越したいという欲求も強くなり、憧れを感じている人との差分、周りの同世代との差分に焦りがドライバーになってますね。

焦りみたいな部分は人によっても違うと思うので、そのコントロールの方法も含めて確かに色々な方にも聞きたいですね

上杉:成長速度を維持するためのモチベーションは人それぞれで良いと思いますが、ここの速度感が遅いと競合に負けるリスクも増えますよね。起業家が増え、出資者も増え、競合が出やすくなっている今、スピード感は一つ重要なポイントなんじゃないかと思っています。市場環境の変化に対応できない場合も出てきそうです。

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上杉さんが事業仮説を大事にしてるのはどうして

上杉:前述した「情報×地頭=意思決定」でもお話しましたが、情報の部分が欠けていた時に成功確度はかなり低くなりますよね。結果的に導き出される仮説の解像度も低くなります。当然行き当たりばったりになるし、このまま走っても博打と変わらない。

求める結果を達成するための仮説、その解像度が高い状況をいかにして作るか、いかにしてそのような状態に持っていくかが最終的なアウトプットに結びつくと思ってます。

なるほど、地道な情報収集とそれによる仮説検証の繰り返しで事業の解像度を上げていく。言葉では簡単ですけど、中には間違いもあるし、起業家によってやり方も変わってきそうです。この辺りは個別に聞くと新しい発見がありそうですね

上杉:はい、そしてその先にあるのが結果だと思うんです。目指すものが、時価総額XX兆円でも、YYの課題を解決するでも、ZZという世の中を作るでもなんでもいいです。人それぞれモチベーションは違う一方で、その強さはかなり重要だと思っています。

この「なんのためにやっているのか」というモチベーションの強さが最終的にやり抜くことができるか、スピード感を持ってエグゼキューションできるかどうかに関わってくると思っています。

確かに正解のない地道な積み上げ作業を数年にわたってやるわけなので、何度も戻れる場所を持っていないと難しくなります

上杉:自分なりのモチベーションの源泉がどこにあるのかを理解していることは重要だと思います。自分はその中でも「憧れ」から入った人間です。可能性に溢れ、未来を語り、実現のために徹底的に努力する起業家やVCの先輩方に心の底から憧れたのがこの業界に入ったきっかけです。

私も起業家を取材するきっかけを思い返せば、彼ら生き生きしてるんですよね。それに触発されたというか。もちろん沈んでいく人たちも多かったですが

上杉:なんというか「生」を体現していると思ったのがVCや起業家だったんです。だからこの領域に憧れ、そのロールモデルが増えることこそが、人々の選択肢の多様性に繋がると考えているので、絶対にやりきりたいと思っています。

ありがとうございます

ーーということで、これからのインタビューでは、1:起業家をモチベートするもの、2:事業をエグゼキューションする方法、3:導き出した事業仮説とは、4:起業家が考える成長と結果、の4点をお聞きし、次世代を担う起業家の新しいスタートアップ基準がどこにあるのかを探ることにします。最後の5つ目の質問は連載時のお楽しみということで。

もう一つ。記事だけではなかなか伝えられないリアルな情報を伝えるために、上杉さんたちと立ち上げている若手起業家コミュニティ「Freaks.iD」ではCxO Nightを開催しています。4月テーマは「イマドキのイグジット戦略」。イベント参加を希望される方はこちらの登録フォームからお申し込みください。先着無料です(応募多数の場合は選考があります)。

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