
Image credit: Masaru Ikeda
小型 SAR(合成開口レーダー)衛星を開発する Synspective は26日、シリーズ A ラウンドで86.7億円を資金調達したと発表した。同社は昨年12月に、東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)やジャフコなどから3億円を調達しており、それに続くものと見られる。以前には孫泰蔵氏らが率いるディープテック向けファンド Abies Ventures などからも調達しており、累積調達額は109.1億円となる。宇宙開発コンサルティング会社シー・エス・ピー・ジャパンの調べによると、創業から1年5ヶ月での109.1億円調達は世界最速。
今回の調達に参加した投資家は次の通り(ジャフコ、東大 IPC、Abies Ventures は以前のラウンドに続くフォローオン出資)。なお、今回リードインベスターを務めたエースタートは今年初め、50億円の宇宙ビジネス特化ファンドを発表しており、宇宙ゴミを掃除する衛星スタートアップ Astroscale のシリーズ C ラウンドとシリーズ D ラウンドにも参加している。
- エースタート
- 清水建設(東証:1803)
- ジャフコ(東証:8595)
- 東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)
- 慶応イノベーション・イニシアティブ(KII)
- Abies Ventures
- みらい創造機構(東工大関連 VC ファンド)
- 三菱 UFJ 信託銀行
- 芙蓉総合リース(東証:8424)
- 森トラスト
- SBI インベストメント(SBI AI & Blockchain)
- みずほキャピタル

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Synspective は2018年2月、新井元行氏(現 CEO)、白坂成功氏(現取締役、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)らにより設立。新井氏は米会計系コンサルティングファームに在職中に東京大学に入学。技術経営戦略学博士号を取得後、サウジアラビアの再エネ導入支援や経済産業省と日本企業の現地進出支援に従事した経験を持つ。
Synspective は、SAR 衛星コンステレーションシステムを構築、同システムから取得したデータと多様なデータを統合し、機械学習等を活用して情報抽出することで、顧客の課題に対するソリューションを提供。小型 SAR 衛星は技術的難易度が高く、また SAR データ処理も専門知識が必要になる。同社には、内閣府の革新的研究開発プログラム「ImPACT」の小型 SAR 衛星開発メンバーが深く関わっており、衛星開発と衛星画像解析の両方に研究チームとデータサイエンティストを配置することでこれを実現している。
提供するソリューションのユースケースとしては、取得した画像やデータ活用による鉱山資源開発、途上国のインフラ建設・不正の監視、防災および減災など。Synspective は2019年4月、フランスのロケット打ち上げ大手 Arianespace と SAR 衛星「StriX-α」の打ち上げ契約を締結したと発表している。

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26日の記者会見での新井氏の説明によれば、Synspective は小型 SAR 衛星を2020年までに1基、2022年までに6基、それ以降、25基の打ち上げを計画している。衛星6基の稼働によりアジアに99ある人口100万人都市の1日1回以上の観測、衛星25基の稼働により世界に292ある人口100万人都市の1日1回以上の観測が可能になるという。今回のファイナンスでは、2022年までに計画している小型 SAR 衛星6基の打ち上げとソリューション開発までの費用確保を意図している。
この分野のスタートアップとしては、日本国内では SAR 衛星開発の QPS 研究所、衛星データ分析の Sigma-SAR などがある。
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