電通とScrum Ventures、SFジャイアンツの聖地オラクルパークで「SPORTS TECH TOKYO」のデモデイを開催——世界から25社が参加

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SPORTS TECH TOKYO ワールドデモデイ参加のファイナリスト、メンター、サポーターの皆さん(一部)

電通(東証:4324)と、サンフランシスコに拠点を置く VC である Scrum Ventures は21日、サンフランシスコ市内のオラクルパークで、スポーツテック特化アクセラレーションプログラム「SPORTS TECH TOKYO」のデモデイを開催した。世界中から集まった起業家のほか、日米両国からの投資家、大企業のオープンイノベーション担当者、メディア関係者など300人超が参加した。

4月に開催された同アクセラレーションプログラムのキックオフイベントの記事で既報の通り、このプログラムは、日米の大手企業とのオープンイノベーションを念頭に、世界各国から多数のスタートアップが集まった。キックオフイベントの段階で暫定値が公開されていたが、ワールドデモデイを迎えて最新の値が公開された。

左から:Michael Proman 氏(Scrum Ventures マネージングディレクター)、宮田拓弥氏(Scrum Ventures ベンチャーパートナー)、中嶋文彦氏(電通 CDC Future Business Tech Team 部長、SPORTS TECH TOKYO プログラムオーナー)

事務局発表による、SPORTS TECH TOKYO プログラムへ参加したスタートアップの数は次の通り。

  • SPORTS TECH TOKYO に応募があったスタートアップ ……………33ヶ国 284社
  • パーティシパント(一次選考を通過したスタートアップ)…………23ヶ国 159社
  • 今回開催されたワールドデモデイに参加したスタートアップ………25社
  • ファイナリストに選ばれたスタートアップ……………………………12社
SPORTS TECH TOKYO に参加したメンターの皆さん(一部)

SPORTS TECH TOKYO には、日米の大企業のオープンイノベーション担当者、エグゼクティブ、VC やアクセラレータのパートナーなどから100人以上がメンターとして参画。パーティシパントのスタートアップにはテーマにあったメンターがアサインされ、キックオフから3ヶ月のプログラム期間を経て、評価の高かったスタートアップ13社がファイナリストに選ばれた。

なお、ワールドデモデイに参加したスタートアップは12社のファイナリスト以外にも、実演可能なサンプルを持つスタートアップがデモブースを出展した。

ファイナリスト12社の顔ぶれは次の通りだ(ピッチ登壇順)。

Misapplied Sciences(アメリカ・レッドモンド)

Misapplied Sciences は、壁面広告などで見る方向によって見える内容が変わるレンチキュラー技術を応用し、角度をつけた LED を散りばめたディスプレイを開発した。同じディスプレイを見ているにもかかわらず、見る人の位置によって異なるコンテンツが見える体験を「Parallel Reality」と命名。スポーツ競技会場で、単一ディスプレイで応援チームが異なるファンに対してコンテンツを出し分ける、空港の待合ロビーで、単一ディスプレイで異複数言語で案内を出す、などのユースケースが想定される。今年末に予定されている新国立競技場のオープン式典での実演に向けて協議中。

Omegawave(フィンランド・ヘルシンキ郊外エスポー)

ウェアラブル端末から取得した神経信号や心拍データをもとに、アスリートに 最適なトレーニングやコンディショニングを提示するサービスを展開。同社の最も包括的なプロダクト「Omegawave Team」は、心拍データ、脳直流電位、神経筋、反応率などをクラウド上で分析。分析結果はチームやコーチにフィードバックされる。アスリートのストレスを減らすことで、パフォーマンスの最大化を支援する。日本トライアスロン連合やサッカー J2 ファジアーノ岡山などとの PoC 実施決定が発表された。

SportsCastr(アメリカ・ニューヨーク)

自分自身がスポーツキャスターになってスポーツ中継を解説する動画を配信できるプラットフォームを開発。ユーザは、自らの名前をつけたコブランドのスポーツチャンネルを簡単に開設することができる。レイテンシーが少ない自社特許技術を採用しているため、例えば、テレビで放映されている中継を見ながら、あるいは、実際にゲーム会場にいながら、解説動画をリアルタイムで見ながらゲームを観戦できる。

DataPowa(イギリス・ロンドン)

メディアの多角化やスポーツ観戦者のニーズ多様化により、スポーツゲームに協賛した際の企業の効果計測は、もはや従来の方法では意味をなさなくなっている。DataPowa は、放送、ソーシャルメディア、サーチエンジンなど、60のデータセットからビッグデータ分析を行い、スポンサーにとって効果評価を定量的に行える値として、POWA インデックスを提供。企業はこの値を見ることで、どのスポーツイベントに協賛するのが効果的かを把握することができる。

Mobile Media Contents(スペイン・バルセロナ)

世界中のスポーツべニューや美術館などを収録した3Dデジタルライブラリを提供。ベニューをバーチャルに表現することで、シート毎の異なる眺望やプライベートクラブ内の様子を反映して、ゲームの楽しみ方に応じたチケット販売に貢献することができる。現在、チケット販売機能は、API 経由で35以上のプラットフォームと連携している。

WILD Technologies AI(アメリカ・サンフランシスコ)

女性アスリート専用の AI コーチ。栄養面、怪我予防など、女性の身体に合ったアドバイスを提供。女性は、初潮、月経、妊娠、閉経など、性特有の身体の変化を伴うため、女性に特化して最適な対策をアドバイスできるサービスを提供。ウエアラブルデバイスによる自動取得や、本人申告による手動取得でデータを集積し、パーソナライズされた運動プランを提示する。

FitBiomics(アメリカ・ニューヨーク)

アスリートの腸内細菌の状態を、シーケンサーを使ってデータ分析し、その結果に応じた摂取物(例えば、乳酸菌)などの摂取を促し、アスリートのパフォーマンスの向上を図る。有名アスリートらがアンバサダー、株主となって FitBiomics の普及を支援している。

Reely(アメリカ・ロサンゼルス)

画像認識技術により、スポーツや e スポーツの試合の動画に自動でタグ付け、ハイライト動画を生成するソリューション。REELY のユーザは試合終了後、ウェブプラットフォーム「RocketReel」を通じて、ライブストリーミングや録画されたビデオファイルを元に、チーム毎、選手毎のハイライト動画を編集し公開することができる。一般視聴者の他、スポーツチームのスカウトハンターなどにも利用が見込まれる。現在、200万米ドルを調達中。

Pixellot(イスラエル・テルアビブ郊外ペタフ・ティクヴァ)

スポーツベニューにカメラを設置し、AI によって試合映像が自動的に編集されるソリューション。カメラマン、スイッチャー、ディレクターなど人的配置が全く不要となるため、プロフェッショナルチームのみならず、コミュニティベースのスポーツゲームなど、ロングテールのニーズに応えたストリーミングなども可能になる。野球の試合で我が子がプレイする様子を母親が苦労してフェンス外からスマホで撮影していたことから、このソリューションの開発に至ったのだそうだ。

ventus(日本・東京)

whooop! は、スポーツチームやアスリートなどがファンから資金調達できるトレカ(トレーディングカード)の売買サービスだ。既存のファンビジネスは、マーチャンダイズや興行チケットなど〝モノの販売〟に終始しており、whooop! ではアスリートへの応援や感動を他のファンと共有したいという思いのマネタイズを試みる。(関連記事1関連記事2

4DReplay(アメリカ・サンフランシスコ)

4DReplay(旧社名:ESM Lab)は、数十台のカメラで撮影した映像をもとに、視聴者が自由に視点を変更し、まるで時空を超越したような映像を再現できる技術「4D Replay」を開発している。2018年の平昌(ピョンチャン)オリンピックや2020年の東京オリンピックなどの代表的なスポーツイベントで利用されることを念頭に置いている。日本では KDDI からも資金調達済で、25日から東京で開催される2019年世界柔道選手権東京大会の地上波テレビ中継(フジテレビ系で放送)でも導入される予定。(関連記事

edisn.ai(インド・バンガロール)

ファン参加型 AI プラットフォームを開発。試合の様子が再生されている画面からタッチ操作で選手を選ぶと、その選手のプロフィール、過去試合実績、トレーニングの様子、シェア可能な写真が表示されるほか、さらに、チームや選手をフィーチャーした 商品のマーチャンダイズのページにジャンプすることも可能。スポーツ消費やマーチャンダイズ、ファンとのタッチポイントの多様化により、スポーツビジネスのマネタイズを支援する。


それぞれのチームの代表は、担当したメンターに紹介される形でピッチセッションに登壇した。日本からは伊藤忠商事、ソフトバンク、ソニー・ミュージックエンタテインメント、総合商社の CBC がパートナーとして参加しており、彼らが自社のイノベーション領域での協業や、日本への市場エントリなどで協力する。

アメリカからは、今回 SPORTS TECH TOKYO に協力した100名超のメンターのうち、アメフトチーム San Francisco 49ers のチーフインベストメントオフィサー、プロレス興行会社 WWE の投資担当責任者、Nike のグローバル産業アライアンス担当シニアディレクター、スポーツ専門テレビチャンネル Pac12 Networks のエグゼクティブ・バイスプレジデントらがパネルセッションに登壇した。

オラクルパーク 3F のクラブフロアには、ファイナリスト12社を含む総勢25社のスタートアップブースが設けられ、投資家や企業担当者とのネットワーキングが行われた。

今回のワールドデモデイは、今年1月に始まった SPORTS TECH TOKYO 第1期の折り返し地点と位置付けられ、残る半年は「活性化ラウンド」として、SPORTS TECH TOKYO は参加したスタートアップのビジネスとしての定着にまで一定のコミットをする。このプロセスにおいては、日米双方から参加したパートナーやメンターらが協力する。既に発表された協業に加え、今後発表される新たなニュースにも注目したい。

なお、ワールドデモデイの会場では、電通と Scrum Ventures から、SPORTS TECH TOKYO が今回にとどまらず、来期以降も開催する計画であることが明らかにされた。第1期がまだ進行中の段階ではあるものの、その結果を受けて、第2期はさらに規模を拡大したいとしている。

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