WebSummit 2019がリスボンで開幕——〝アンチ米国政府〟のキーノートスピーカーらの登壇で幕を開ける

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Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、WebSummit 2019 の取材の一部である。

世界最大規模のスタートアップ・カンファレンス「WebSummit 2019」がポルトガルの首都・リスボンで開幕した。イベントはまだ続いているため正確な参加者数は発表されていないが、関係者の話によれば7万人に達する見込みこれは3日間ののべ人数であるため、実質的な参加者数は2万人〜3万人の間と推測される。

今年のイベントでオープニングのゲストキーノートを務めたのは、Edward Snowden 氏と、5G 技術で世界を席巻する Huawei(華為)会長の Guo Ping(郭平)氏という、ある意味、アメリカ政府から睨まれる存在にある象徴的な二人だった。WebSummit の姉妹イベント Collision がニューオーリンズからトロントに移ったことから、WebSummit 的には必要以上にアメリカ政府に気を遣う必要がなくなったのかもしれない。

(2016年、リスボンで初開催された WebSummit のタイミングが、ちょうど Donald Trump 氏がアメリカ大統領に選ばれた日だった。Dave McClure 氏がステージで発狂していた記憶も蘇るが、WebSummit やそのスピーカーは何かとアメリカ政府と距離を取る傾向にあるのかもしれない。)

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Snowden 氏は、ヨーロッパで GDPR が導入されたことについて好意的な意見を述べたが、「悪用されるのはデータではなく人々だ」とし、「すべてのブラウザ、すべてのインターネットサービスプロバイダは、政府によって制御される可能性があり、人々が信頼すべきではない権力組織の一部になり得る」と主張した(Snowden 氏はロシアからの中継による登壇)。

最近、海外のスタートアップが集まるカンファレンスに来ると、必ずと言っていいほど話題に上るのが気候問題、水・食糧問題だ。今回の WebSummit でもペットボトルやカップを再利用し、なるべくプラスチックゴミを減らそうという試みが始まっている。ペットボトル入りのミネラルウォーターを買わず、マイボトルを持参してミネラルウォーターをフィルしてもらう「Just Water」の Jaden Smith 氏や、映画俳優の Matt Damon が共同創業者を務めることで知られる「安全な水へのアクセスを可能にする活動」を展開する NPO Water.org/WaterEquity の CEO Gary White 氏もキーノートを務めた。

Image credit: Masaru Ikeda

WebSummit のオープニングにあたって記者会見に臨んだ WebSummit の CEO Paddy Cosgrave 氏は、自身もアイルランドの農場で育った生い立ちから、水・土壌・食糧には人一倍関心を持っていると話し、今回、WebSummit でもプラスチックゴミを減らそうという努力をしていることに理解を求めた。

2010年にダブリンで始まった WebSummit だが、2016年にリスボンに移り、通算で10回目、ポルトガルでは4回目の開催となる。ダブリンに本拠を置く WebSummit の運営会社 Ci では、社内で250人以上の人々が WebSummit の3日間のために日夜努力している。無論、イベント当日は、場内警備やコンテンツプロダクションなど契約ベンダーのスタッフが数多く働き、ボランティアや地元警察なども含めれば、総勢数千人以上が従事していると見られる(ボランティアの数だけで2,702人)。

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Cosgrave 氏によれば、今年の WebSummit 参加者のうち女性の比率は46%で、昨年の45%に比べるとやや値は上がり2人に1人は女性という、他のスタートアップカンファレンスでは考えにくいジェンダー・ダイバーシティが実現している。今回で10回目を迎える WebSummit だが、ステージの進行からサイネージのデザイン細部に至るまで、改善すべき点はまだまだ残っていて、常に満足はしていないと述べた。

今回、展示エリアには、経済産業省や JETRO(日本貿易振興機構)が主導する J-Startup から日本のスタートアップ16社を、Plug and Play Japan は「Batch 2」デモデイ優勝の No New Folk Studio、Orange Fab Asia は直近シーズンのデモデイで優勝した meleap を提供する HADO をそれぞれ招聘し展示ブースを開設。このほか、日本からは昨日2億円の資金調達を発表した mui Lab のほか、Stroly、Axelspace などがグローススタートアップとして参加している。創業の日から世界市場で競うことが宿命となる宇宙スタートアップの参加が目立つようだ。

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