リクルートとの提携は何を意味するーークラウドワークス吉田氏に聞く「新しい働き方と上場のこと」

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クラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎氏(撮影は2013年12月)

前回記事で、国内外のクラウドソーシング4事業者を公表されている数字で並べてみた。そこから簡単な考察としてこの事業が時間のかかりそうなこと、公共性の高いものになる可能性の高いことを書いた。今回はこの4事業者の内、国内2事業者の代表者にインタビューを交えてその課題の解決方法や考え方についてまとめてみる。初回はクラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎氏だ。

吉田氏にはこれまでも何度かインタビューで事業の課題や展開については話を聞いている。大きく私が持っていた疑問点と同氏の回答をまとめるとこのようなものになる。

  • 課題1:発注者側の理解ーー個人発注時の法務、業務、支払などのルール、認識の擦り合わせ
  • 課題2:受注者側の理解ーーお小遣い稼ぎではないプロの自覚、事業運営能力のばらつき
  • 課題3:事業体の成長ーー発注者、受注者と共に成長するため、事業体としては時間がかかる可能性が高い

もちろん、これら以外にもどうしてもデジタル系によりがちな仕事の偏りや、市場拡大のための海外展開など、考えられる課題は多岐に渡るが、根本的なものを中心に紐解いてみたい。同氏との会話で「文化をつくる」という言葉がよく出てくるのだが、ここでいう文化とはこれらの課題認識を各プレーヤーたちと擦り合わせ、解決していくこと、と言い換えることができるだろう。

課題1と2については以前も話を聞いており、一足飛びに何かをがらりと変えることは難しい。少し変化があったとするならば、元々クラウドワークスはあまり積極的に人員を投じてこの部分を解決しようとはしていなかった。

2013年4月に取材を実施した際の吉田氏との会話では、基本的にマッチングにプラットフォーム側は関与しすぎない、というスタンスを語っている。そこから約1年が経過し、恐らくここにはシステムだけに頼ることのできない、より一層の「攻め」が文化づくりには必要と判断したのだろう、2014年5月のインタビューでは流通総額の躍進要因としてこう分析している。

大企業向けに一社一社カスタマイズ対応してニーズに合わせた結果、継続的な発注がいただけるようになった、という側面はあります。中には数千万円単位で利用してくださるクライアントの方もいらっしゃいます(吉田氏/2014年5月23日インタビュー)。

今回、改めて吉田氏にも整理した数字を元にいくつか質問を投げかけてみた。(太字の質問は全て筆者。文中敬称略)

ーー国内主要事業者および同様の事業者を数字で比較したのがこの一覧です。やはり目立つのはElance-oDesk連合との差で、現時点で明らかになってる数字と比較すると開きは大分あります。一方で、これまでお話をお聞きしてこの数字が来年、大きく跳ね上がっていることは考えにくい状況もありますよね。

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吉田:実際の消費や労働といった概念における通貨の基軸というのでしょうか、考え方は変化しつつありますよね。例えば定額制。HuluやSpotify、kindleだって製造原価からの割り戻しではなく、マーケットサイドからのリクエストで価格が決まりつつある、というのは以前もお話しました。まず、自分たちがそういう大きな転換点に立っている、という認識を持つことが重要です。

ーー仕事や受け取る報酬、お金の使い方そのものに変化がある、と。

吉田:そこで考えるべきはやはり決済だと思うのです。これはもっとカジュアルな存在になっていくはずだと。貨幣と気持ちの距離が近くなると言いましょうか、何かを実施した際にありがとう、という気持ちと一緒に貨幣をお渡しする、という世界がやってくるようになる。

ここで言わんとしたいことは実は少し深い。個人がクラウドソーシングという新しい働き方を選択した場合、企業では当たり前でもある金銭の送受信ーーいわゆる請求書等のやり取りだがーーこれは自分で実施しなければならない。さらに言えば、そういうバックオフィス業務に信頼性がなければ企業は相手にすることはない。

こういった金銭授受や個人の身元保証、信頼を含めて対企業レベルの信頼感で決済ができるプラットフォームがあれば、発注者側はカジュアルに受注者に対して対価を支払うことができるようになる、という話だ。

しかしそれにはやはり時間がかかる。質問を続けよう。

ーー個人が企業レベルで信頼感を与えられるプラットフォームがこのクラウドソーシングの仕組みだとして、これまでも吉田さんは注文側の発注技術、受注者側のプロ意識など課題を挙げられていました。双方ともに教育レベルで地道な努力が必要な課題です。

吉田:社会の期待に応えるためには10年単位で時間はかかりますよ。

ーー大型の増資や今回リクルートと実施した事業提携もそれを睨んでの展開ですよね。

吉田:Amazonのような流れかもしれません。投資を受ける事業は「N字カーブ」のように上場前に一旦黒字化して、新たに資金を元にもう一度「掘って」再投資するタイプのものと、「J字カーブ」のように中長期で投資戦略を組むものもあります。私たちはどちらかというと後者ですが。

クラウドワークスはこれまでにも15億円近くの資金調達を実施している。一方、海外事業社で比較するElanceは合併までに約9500万ドル、oDeskも約4400万ドルを調達している。先行するElance創業から16年経過、2013年末に両社は合併したが、まだ未公開企業のままだ。海外も積極的に指向しなければならない同社にとって考えるべきスケールはまだまだ大きい。

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2014年08月08日付けのプレスリリース/リクルートホールディングス

またクラウドワークスは8月8日、新しい展開としてリクルートの投資子会社を引受先とする第三者割当増資の実施を発表している。この動きは一体何を意味するのだろうか?

ーーひとつ、妄想のような話を質問させてください。注文数を劇的に増やす方法として、考えられるのはやはり大口の注文だと思うのです。そこで社会的信頼のある企業を一定数安定した株主として迎え入れ、場合によっては早めに株式公開して公的なポジションを構築する、ということを考えたのですが、どうでしょう、赤字上場も含めて可能性は。

吉田:今日はえらく切り込みますね(笑。

(8月18日筆者訂正:上記の吉田氏の回答は大口注文を得る方法として大企業との連携を深める、ということについての回答であり、上場に関する質問については一切ノーコメントというスタンスです。訂正させていただきます)

ーーそういう視点で考えると、リクルートとの資本提携は数千万円規模と報じられていて、資金調達が目的という認識はあまりありません。一方で前述の通り、注文側(仕事量)を増やす上においては、資本力、社会的信用度の高い事業者と提携することはメリットのように思えます。リクルート社の役割はどのようなものなのですか?

吉田:まずはリクルート社自体に率先して利用してもらう、ということから始まります。

ーーリクルートは人材会社であり、リソースの提供も可能です。また営業力もあり、注文を取ってくることも考えられます。一部報道では共同でサービス開始の話もありましたが。

吉田:そうですね。リクルートの各部門と連携してあらゆる検討を開始しますが、具体的に何か一緒にサービスを開始する、という明確なものはまだありません。

リクルートは今回の業務提携のリリースで積極的なノウハウの取得を伝えていた。これを額面通り受け取れば、同社はクラウドワークスとの提携を通じてノウハウを取得し、その後、自社でサービスを立上げる、という見方をすることもできる。吉田氏にこの点を質問したが、本件についてはノーコメントだった。

少し雰囲気が厳しくなった。話を変えよう。

クラウドソーシングが事業体として成長する際、どうしても考えなければならないのがその手数料の存在だ。事業者としては手数料を上げることで利益率は確保できるが、利用者、つまりそこで働く人たちにとっては受取額が減ることになる。この仕組みがお小遣い稼ぎで終わるのなら、大した問題ではない。

しかし、本当に新しい働き方として人々の生活の一部になるのであれば、このアップダウンは生活に直結する人も出てくる課題になる。消費税や所得税の問題に近いかもしれない。

ーー吉田さんを20万人が登録する「街」の市長と考えて、手数料を税金として捉えた場合、その調整は大変難しい課題ですよね。

吉田:確かに仰る通りです。私たちは現在MITと共同で調査研究を実施しているのですが、そこでも実はあるコミュニティに対して税金をかけてそれを無料にした場合、どうなるか、という検証をしていたりするんです。

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ーーつまり手数料を無料にする実験ですね。

吉田:もちろん(発注/受注両方の)ユーザーにとってそれは喜ばしいことです。でもそれって例えばメルカリやBASEといったサービスでは実際に発生している出来事で、純粋なサービスとしての「善」を貫いている点で彼らのやり方は正しいと思っています。

ーー永遠に無料期間が続くわけではなく、どこかで手数料などの何らかのビジネスは発生するでしょうけどね。

吉田:一方で私たちのような事業との違いはあって、市場の啓蒙と共に伸びる、という性質を考えると、現在のようなモデルを回しながら進める必要がありますね。

ーー心配なのはやはり今後、株式公開などを通じて公器となったり、場合によってはどこか大資本の傘下に入った際、第三者からの圧力でそのコミュニティのバランスを崩されないかという懸念です。利益を早期に上げろという意見に従った結果、手数料が上がったのでは働く方々にとって不安材料に繋がります。

吉田:収益源はなにも手数料だけに留まりません。例えば現在、このプラットフォームに蓄積されている膨大なデータを元に新たな収益源が生み出せるかどうか、そういうことも考えています。ほら、街の運営でも税収を考える際、消費税や所得税、その他法人税などいくつかのポートフォリオを組む訳でしょう。それと同じことではないでしょうか。

ーーありがとうございました。私も新しい働き方については本当に自分ごととして取り組んでいるので引き続きウォッチ続けさせてください。

さて、いかがだっただろうか。次回は新しい事業戦略を発表したランサーズ代表取締役の秋好陽介氏に話を聞く。