Viibar は単純な動画クラウドソーシングから脱却して次のフェーズへーー日経と資本業務提携し4億円を調達、鍵はクリエイティブの「質」

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動画クリエイティブを手がける Viibar は1月17日、日本経済新聞社(以下、日経)との資本業務提携を発表した。同社は近く日経が新設するデジタルマーケティングの新組織「N ブランドスタジオ」と共同でチームを構築し、主に同社が提供する動画クリエイティブ関連の支援を通じ、新サービスや広告商品の開発・提供、運用などを行う予定。

Viibar 代表取締役の上坂優太氏の話では具体的に2017年春頃を目処に、日経が運営するメディア NIKKEI STYLE 内に新たな媒体企画を立ち上げる。この他に日経が現在提供しているタイアップ広告などに動画コンテンツをセットにした商品開発や、企業のコンテンツマーケティング支援にも乗り出す。

Image Credit : Nikkei Style

今回の業務提携に伴い Viibar では第三者割当増資も同時に実施している。ラウンドに参加したのは日経の他に電通デジタル・ホールディングスと既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズの2社。調達した資金は総額約4億円で、その評価額や払込日などの詳細は開示されていない。

企業の動画クリエイティブをクラウドソーシングの方法で支援してきた Viibar が次の展開、メディアとの資本業務提携に動いた。元々、前回ラウンドでヤフー本体から出資を受けていることや、自社での分散型コンテンツ「bouncy」などで、単なる動画制作クラウドソーシングとは違った、ややメディア寄りの路線を歩んでいただけにその方向性が一層鮮明になったと言えるだろう。

Viibar の制作実績

Viibar はここ数年、動きの多かったクラウドソーシングの流れを汲むサービスで、オンライン上にクリエイターを集め、独自の制作プラットフォームを提供することで制作業務を効率化した。これまで専門の制作会社に発注するしかなかった動画・映像制作の現場に新しい選択肢を与え、2013年の創業以来、オンライン上に抱えるクリエイターの数は3000名、同社の利用企業数は600社に上る。

一般的な制作会社であれば発生しうる特定クリエイターの脱退による質の低下や、大量発注時のリソース不足などの心配がない、いわば「クラウド上の制作スタジオ」というスタイルが Viibar の最大の特徴だ。

そして制作したコンテンツは多くの場合「配信」、つまりメディアが必要になる。従来型のテレビやサイネージなどに加え、当然、インターネット経由での配信も彼らのクリエイティブを供給する先となる。

リリースにも記載がある通り、Viibar が他のメディアの動画制作を支援するのは特にこれが初めてということではない。しかし今回、資本提携まで含めたのは、こういったクラウドソーシングによる動画制作・運用ノウハウを単なるクリエイティブの受託制作だけに留めず、よりメディア的な事業に広げようという意思が感じられる。実際、上坂氏に聞くと、今後の日経とのビジネススキームについてはまだ未定としつつも、例えば今回発表された項目以外にも広げる可能性や、レベニューシェアなどの方法も十分に考えられるということだった。

Viibar はクラウドソーシング(案件マッチング)からやや制作受託に近いプラットフォームになっている

では、日経というブランドと連携することで彼らの動画マーケティングビジネスは大きく花開くのだろうか?

上坂氏が特に強調していたのがクリエイティブの「質」という言葉だった。そもそもクラウドソーシングはごく一部の特定作業に関してクオリティコントロールの難しさを抱えている部分がある。しかし、Viibar はこの部分をシステムと運用でカバーし、トップブランドが活用できる質を担保することに成功している。

「シセイドウ ビノラボ」ブランディング動画 from Viibar on Vimeo.

コストについても上坂氏はこのように説明してくれている。

「価格は大手の制作会社、つまり人の手間暇をふんだんにかけてやるものよりもリーズナブルです。一方で、数人で内製でやってる制作会社や、質を問わない類のクラウドソーシングよりは高くなっています。弊社としては安いだけの仕事は、クリエイターがやる仕事ではないと思っているので、それで良いと考えています」(上坂氏)。

この質と価格のバランスが最終的な利益につながるのは間違いないだけに、日経ブランドで販売を開始する各動画広告商品の値付けや利益率などが気になってくる。

Viibar は質のよいコンテンツを柔軟に世に出せる仕組みをこの数年で構築し、今度はこれをブランド力のある媒体、配信を使って流す段階にやってきた。ここを自社のビジネスとして拡大できるかは同社が制作プラットフォームから次のステージに脱皮できるかの試金石になってくる。

「結局は強いブランドを作れるかどうかに尽きると思っています。ブランドが強いというのはそのメディアがファンベースを持っていてその CPA(獲得コスト)が低い状態にあるという認識で、これがしっかりとしていればコンテンツはプラットフォーム経由であろうが、自社メディア経由であろうが特に関係はありません。

メディアというのはコンテンツの集合体です。このクリエイティブ制作に集中できる環境にはこだわりを持って取り組みたい。私たちは単純に案件とクリエイターをマッチングしただけの仲介業者ではなく、クリエイターを審査したり、色々こだわった結果、その方向性が間違っていなかったことを確認できました。昨今、コンテンツ周辺では様々な問題が発生していますが、結果的により生産的な働き方や、制作のあり方が求められていくんじゃないでしょうか」(上坂氏)。

広告主、媒体、制作者ーーこの三方よしをクラウド、テクノロジーの力で実現できるか。引き続き注目したい。